橋下さんは思想的にはかなりリベラル

【塩田潮】在任中の憲法改正に強い意欲を示している安倍晋三首相は日本維新の会を「改憲の友党」と位置づけて頼りにしています。維新の会は憲法問題をどうお考えですか。

小沢鋭仁氏(衆議院議員・元環境相・現日本維新の会憲法改正推進委員会会長)

【小沢鋭仁・日本維新の会憲法改正推進委員会会長】時代の変化に合わせて憲法改正を行うというのが維新の会の基本的な立場です。憲法9条の話にはこだわらない。戦後の憲法改正の議論は、保守は改憲で、革新は護憲というようなイデオロギー的な対立の構図の中で行われてきましたが、われわれは脱イデオロギーです。あくまでも時代の変化に合わせて社会や経済や政治の仕組みを変えていくという意味で憲法改正を考えています。

安倍さんが憲法改正を訴えているのは歓迎です。自民党の改正の中身については、具体的な協議が始まっていませんので、よくわかりません。ですが、安倍さんの場合、今まではイデオロギーをベースにした改憲論がちらほら感じられました。ただ、2回目の政権では大変、成熟し、慎重な言い回しをしていますね。上手に進めているのかなというのが感想です。

【塩田】維新の会の憲法問題への基本姿勢は、「自主憲法制定論」や「占領憲法打破論」ではなく、現憲法の基本原則を認めた上で、時代に適合しなくなった部分や、現憲法成立時からの不備や矛盾点、欠陥などを直すといった憲法修正的な考えですか。

【小沢】その通りです。橋下徹さん(前大阪市長・元党代表)を始め、主流の考え方は修正論だと私は認識しています。橋下さんは、どちらかというと、憲法に価値観は入れない。憲法は権力を縛るものだという考え方が強いです。「家族を大事にするとか、そういう話は憲法には必要ない。そういう価値判断は入れるべきではない」というのが橋下さんの意見ですね。そういう意味では、思想的にはかなりリベラルですよ。

【塩田】これから国会で衆参の憲法審査会を中心に、憲法問題について各党協議が本格化すると思われますが、協議の進行と展開をどう展望していますか。

【小沢】今、開会中の臨時国会で憲法改正案の取りまとめまで進めばベストですが、それはあり得ないと思っています。ですが、改正のテーマの議論が始まり、それを絞り込むところまでは、ぜひ目指したいですね。ただ、憲法審査会はこれまで17年、やっていますが、ずっと勉強ばかりでして、アウトプットがあったのは、国民投票法だけなんです。国民投票法の改正は、維新が提案して最終的に各党の相乗りで成立しました。それが唯一のアウトプットです。憲法自体に関するアウトプットは何もないんです。やってきたのは、国会議員の意見表明だけです。意見を詰める議論は1回もなされず、みんな言いっ放しでした。

【塩田】どうしてそういう議論ばかりだったのですか。

【小沢】共産党は憲法改正に反対だけど、憲法審査会には出る。要するに足を引っ張るわけですよ。公明党は「加憲」が基本方針だけど、改正に踏み込もうとしない。自民党は公明党にものすごく気を遣います。民進党はご承知のとおり党内は改憲派と護憲派が半々です。改正の方向で引っ張っていこうとしているのは、自民党の半分と維新だけです。