「低迷が続いたマクドナルドが、劇的に業績回復している」……今年、こうした報道を多く見かけます。45周年記念キャンペーンやポケモンGOとのコラボなど、同社に関する楽しい話題が増えているのは事実。マクドナルドの“復活”は本物なのか? ハンバーガー業界全体のトレンドも絡めながら、公認会計士・秦美佐子さんが解説します。

見せかけの復活劇

売上高23%増はまさに快挙です。日本マクドナルドホールディングス(以下、マクドナルド)の2016年1月から6月までの連結売上高が前年同期に比べて2割以上も増加したことから、その復活があちこちで叫ばれるようになりました。

確かに前年同期比で6月末時点の直営店舗数が1036店から945店へと1割近くも減ったにも関わらず、既存店売上が23%も増えているのは並大抵のことではありません。1店舗あたりの平均売上増は、業績回復を裏付ける結果となりました。

しかし、比較の対象期間を広げてみると見方が変わります。2013年12月期から年間ベースの連結売上高を比較してみると、2015年12月期の売上高が最も低いことが分かります。

会社が発表した2016年12月期の売上予測は2200億円。この調子でいけばおそらく達成できる数値でしょう。前年の売上高1894億円に比べれば大きな増加となりますが、比較対象が悪すぎたのです。2015年12月期の売上高は2001年上場以来の最低額であり、また過去最大の当期純損失を出しました。そこと比較して今年が良くなったと言っても、手放しには喜べません。回復というよりもようやく底打ち反転といったところでしょうか。

実際に、マクドナルドのホームページで開示されている月次のセールスレポートに基づき2013年12月期と比較した場合の既存店売上高の月次動向を算出してみると、3年前と比べるといまだにマイナス成長だということが分かります。

2014年7月に発覚した鶏肉の消費期限切れ問題でマクドナルドは深刻な打撃を受け、8月になると売上は前年同期比で25%も減少してしまいました。また、2015年1月には人気商品チキンマックナゲットなどに異物が混入していたと相次いで報告されたことから、売上高が前年同期比39%減という上場以来最悪の減少幅を記録しました。そうした影響で2015年は特に不振だったのですが、実は問題発覚前から既に前年割れが続いており、2014年2月でも前年同期比9%も売上が減っているのです。

以上から、食品問題のみが業績悪化の背景にあるわけではないと考えられます。他の要因を明らかにするためにも、次にハンバーガー業界全体の動向について触れてみたいと思います。