地方移住希望者は「安定」を求めていない

日本全国の「田舎」と呼ばれる地方のまちが、地域外から若者を集めることに力を入れているようです。でも、多くの自治体は若者が求める環境や条件について少し「勘違い」をしているような気がします。各地の移住政策を見ていると、住むところだけでなく、安定した雇用・職場や都会に負けない魅力的な施設やサービスがあることを訴え、「うちは都会に負けないくらい十分にいい環境だよ」といったメッセージを打ち出している自治体が多いようです。でも、いろいろ実験的な取り組みをしてみたところ、若者たちは必ずしも安定した環境を地方移住に求めているわけではなく、むしろ、冒険心を駆り立てられるような「不完全」な場所を欲している人も多いことが分かってきました。

田舎は不完全?

この連載でもご紹介しましたが、昨年福井県鯖江市において「半年間家賃無料にするからとりあえず体験移住してみてほしい。特に仕事などは紹介しないが、その間は働かなくてもいいし、何をしても自由」という条件の「ゆるい移住」なる実験的な政策を提案し、市の事業として行いました。「そんな無茶苦茶な条件で若者が来るはずがない」という批判もあったのですが、結果は、半年間を通じて日本全国から15名の若者が体験移住を行い、なんとそのうち6名が鯖江市で継続して生活しています。「自分たちで自由に試行錯誤や開拓ができる」という「ゆるさ」が魅力的だったようです。

社会環境の成熟にともなって、「与えられる」ことや「そろっている」ことがむしろつまらないと感じる人も増えてきているようです。これまでデメリットであると考えられることが多かった田舎のまちの「不完全さ」や「開拓の余地」こそ、若者を集める新しい魅力になりうるのかもしれません。