「いつも自分は損ばかりしている気がする」そんな人は、ここに挙げるような行動をしている自覚はないだろうか?

株は自分が買った値段にこだわってしまう

ある証券会社の営業と顧客の会話。「勧められて買った株、下がったじゃないか!」「すみません。でもいい株なので、そのうち上がりますよ。それよりどうです、いま買い増してみては。買えば平均買付コストが下がりますから、元の値段に戻れば儲かりますよ」「お、いいね。それ頼むよ!」。

このように、株価が下がったときにさらに買い増す方法を、株式投資用語で「ナンピン買い」といいます。

一株1000円で買った株を持っているとしましょう。それが800円に下がったら、どうしますか? まだ下がる可能性が高いなら、売ったほうが損が少なくてすみます。なのに「元の1000円に戻るまでは売れない!」と買値にこだわり、なかなか売る決心ができない……。こんなとき、心の中では「認知的不協和」(自分の間違いを認めたくない気持ち)が起きています。売って損を出せば、1000円で買った自分の判断ミスを認めざるを得ないからです。

この嫌な気持ちは、「将来この株が上がる」と考えないと解消できません。すると「1000円で買ったものが800円。いま同じ株数を買えば平均買付コストは900円に下がる。そうすると、元の1000円に戻ったら儲かるじゃないか!」と考えたくなる。でもこれでは単に、賭け金が増えるだけです。

ちなみにこのナンピン買いは、損失が膨らんでいく典型的なパターン。ナンピン買いで成功したケースはあまりありません。

大江英樹
1952年、大阪府生まれ。野村証券で個人資産運用、企業年金制度のコンサルティングなどを手掛ける。2012年、オフィス・リベルタスを設立。行動経済学の研究からその問題点や解決法に切り込む講演・セミナーが人気を博している。『その損の9割は避けられる』『老後貧乏は避けられる』など著書多数。
(中尾美香=構成)
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