多くの日本企業はルールの重要性にまだ気づかない

いくら政府や省庁が企業の声を求めているといっても、そんなものはほかの企業任せにしておけばどうにかなると考えている企業もあることだろう。

しかし、それでは企業がこの先、生き残ることはできない。

なぜなら、あらゆる企業が活動する国・地域、業界が持つ独特のルールに束縛されているからだ。ロビー活動を通じて、ルールに働きかける企業は、社会をよくしつつ同時に自社に有利な状況を生み出すことができる。日本政府もまた、ルールの重要性に改めて着目し、行動を起こしている。

『ロビイングのバイブル』(藤井 敏彦、岩本 隆、株式会社ベクトル パブリック・アフェアーズ事業部著・プレジデント社刊)

2014年7月に経済産業省でルールメイキングに関する大きな動きがあった。「ルール形成戦略室」の設置だ。報道などでは「日本企業に有利なルールを作り、企業の利益を拡大させる」という側面にばかり光が当たっていたように思う。しかし、それはあくまでも結果の話。やはり前提にあるのは、我田引水ではなく、社会問題の解決のために新たな国際ルールを作るということである。

日本企業が海外進出するにあたって、障壁となっているルールがあるのであれば、それを乗り越えるための、しかも社会をよくするための方策を、官民一体となって考える時代が来たのだ。

日本には、ルールというものが上から下に押し付けられるという文化が根強くある。しかし、市民がルールを作るのではなく、お上によって定められ、それを守ることだけ考えるというのは、はたして本当の民主主義といえるだろうか。ルール形成戦略室の誕生は、これまで多くの人々が政府の「責任」であると誤解してきた国際的なルール作りへの積極的な参加を、政府が呼びかけていることの表れだ。

日本国内においても、政策をビジネスのツールとして活用できる時代が到来した。既存の政策でビジネスが成り立たないのなら、そのために政策を作り、あるいは転換させる。自社の製品を売るためには、政策作りに積極的に参加する。そんな姿勢が求められている。