学校給食費の未納が全国的な問題になっている。文部科学省は07年1月、全国小中学校の給食費の徴収状況について調査結果を発表した。それによると、未納額は約22億円、未納者数は約9万9000人に達し、未納者がいた学校は全体の43.6%にのぼっている。

この給食費、そもそも法的には、親に支払う義務があるのだろうか?

学校給食は、「学校給食法」によって教育の一環として位置付けられ、食材費のみ親が負担するものとされている(6条)。だが、憲法26条には「教育を受ける権利」が保障され、義務教育の無償を定めている。この点について、荘司雅彦弁護士は次のように解説する。

「憲法26条2項の『義務教育は、これを無償とする』という条文の解釈については、最高裁が無償の範囲は授業料に限定されるという大法廷判決(昭和39年2月26日)を出しています」

つまり法的には、圧倒的に未納者の分が悪いのだ。それゆえ最近は、未納者に対して強硬な姿勢で臨む自治体も目立ってきた。たとえば広島県呉市は昨年、簡易裁判所に支払い督促を申し立て、保護者の給与を強制執行により差し押さえた。

訴訟になったケースもある。広島県・比和町(現・庄原市)において、支払い能力があるのに娘3人の給食費を8年間にわたり滞納した親(被告)に対し、総額70万円の支払いを求めた事案だ。06年12月の控訴審判決(広島地裁)では、民法上の消滅時効(2年)を理由に、全額支払いを命じた簡裁判決を取り消し、10万円の支払いを命じた(07年1月には被告側が上告)。

07年4月、栃木県の宇都宮市教育委員会は市内の小中学校に通う児童・生徒を対象に、連帯保証人付きの「学校給食費納入確約書」の提出を求める方針を打ち出した。連帯保証は、貸主から返済の請求があれば、ただちに応じなくてはならない制度。もし未納や滞納が発覚した場合、自治体がどう出るか、連帯保証人への強制執行など法的な対応策は不透明だ。

払えるのに払わないモラルの低い親が注目される一方、払いたくても払えない生活苦の親も相当数いる。