地域エコノミストとして全国各地を巡っている藻谷浩介氏。市町村合併前に約3200あった全地方自治体を踏破している。各地の実情、地勢、風土まで知り尽くした氏が地域経済を眺めていて感じることとは、何か。

国主導の地方創生がうまくいかないわけ

私は長年、地域の再生や地方活性化について発言してきた。そうしたなか、国が「地方創生」をスローガンとして掲げ、人口減少問題に正面から取り組む姿勢を見せたことは、他のどんな論者よりも高く評価している。東京都豊島区ですら、消滅可能性のある自治体と名指しされたくらいで、人口減少は日本中のすべての自治体が直面する問題なのだ。

日本総合研究所・藻谷浩介主席研究員(撮影=青木優佳)

とはいえ国が予算を付けて行うことは、とかく「補助金ビジネス」の温床となりがちだ。全市町村に「地方創生計画」策定を義務付けたところ、不勉強な自治体ほど地方の現状をわかっていないコンサルタントに丸投げすることとなり、相も変わらず道路や箱モノ中心の形式的な計画ができて建設業界を喜ばせる結果となっている。

国自身わかっていることだが、地方創生が国主導で成功するわけはない。国を親、地方を子どもにたとえるとわかりやすいが、親が子どもに小遣い(カネ)をたくさん与え、一方的にああしろ、こうしろとやって、子どもがちゃんと育つか、ということだ。子どものやる気を喚起して、生活費ではなく自己研鑽費を支援することで、初めて子どもは自立していく。地方創生の補助金も、全部がムダということはもちろんなく、この話の前から高い意識を持って研鑽をしてきたような自治体では、とても有効に使われている。

地方創生が、若者を中心とした国民の一部の意識に働きかけをしたことも評価できる。21世紀だというのに、いまだに親の意識は高度成長期の頃のままで、「いい大学に行って、いい点数を取って大企業に就職を」一辺倒だ。そのため出生率が1.2しかない、つまり非常に子どもの生まれにくい首都圏に若者が集中し、結果として日本の人口減少に拍車がかかっている。「手に職つけて、田舎で人間らしい暮らしをするのも悪くない」という選択肢を、国が音頭をとって示したことは画期的だった。

とはいえそこで親が「お前が田舎で結婚するためのデート費用を出してやろう」といって金を与えてしまえば、子どもは経済的に自立しないままであり、ますます彼女ができない、みたいなことが起きるのは当たり前。補助金ビジネスでうまくいくはずがない、というのはそういうことだ。予算を執行すれば終わりと考えているうちは、真の地方創生は難しい。