居酒屋で報告を聞いて作戦会議

私の酒はビールをコップに1杯飲む程度。それでも社員70数人の山口支店の支店長の頃は、事務所に戻ってきた部下とのミーティング場所は、市内の湯田温泉中心部にある居酒屋だった。

大和ハウス工業 樋口武男会長・CEO

店に入るのは午後10時過ぎ。4人掛けのテーブルを2つくっつけて、真ん中に私が陣取る。残りの席に部下6、7人が座る。最初に料理と飲み物を注文してから、それぞれの報告を聞き、明日はどういう具合に商談を進めるか20~30分、作戦を練った。ひと通り話が済めば、「よし、食べよう」となったが、熱が入ってくるとつい声が大きくなり、「わかっとるのか」と私がテーブルを拳でドンとたたいたりした。すると、女将がさっと料理を持ってきてムードを変えてくれたりしたものだ。職場の連帯感や、やる気ムードを盛り上げるためには宴会が必要なときもあるが、私は部下と真剣に一対一で話をするときには酒は飲まなかった。

赴任当初は一刻も早く業績を挙げたいと焦るあまり、目標未達の管理職の胸倉をつかまえては怒鳴り飛ばすようなことをやっていた。しかし、焦れば焦るほど部下の心は離れていった。