軽口を叩いただけ、部下が不祥事を起こしただけ、疑われただけで、懲戒処分が下されることがある! ここでは最新の傾向と自己防衛術を紹介しよう。

呼気検査の対応で成否は分かれる!

暴力沙汰で多いのはやはり酒が入った状態でのトラブル。会社帰りにいい具合にできあがり、どちらが絡み始めたかわからないまま殴り合いに発展し、警察の厄介になるという流れだ。しかし、日本というのは不思議な国で、薬物には厳しいが酒には寛容だ。酔っぱらいが暴れても、大して問題にならない。自国にいる感覚で大麻を吸って逮捕された外国人からすれば、街中で暴れる酔っぱらいを放っておくほうが理解不能らしい。とにかく、痴漢やその他不祥事と比べれば、実際に殴ったほうが人的被害が大きいにもかかわらず会社での処分も酒の場合は比較的軽度で済まされることが多い。

さて、では実際に酔って人を殴ってしまったらどうすればいいのか。向こうが殴りかかってきたので最低限防衛しただけであっても、往々にしてどちらが火蓋を切ったのかで揉める。また、仕事からの帰宅中であるので、労災を適用してくれたらありがたいのだが、非常に微妙なケースが多く、私自身、相談を持ちかけられることがある。これが会社の歓送迎会の帰りなどであれば、より強気に主張することもできるが、酩酊状態であったと判定されれば厳しい。結局、全然酔っていないのに、あちらから仕掛けられたと言えるかどうかが重要になる。大して酔っていないが、呼気検査で一定の数値が出てしまうと、いわゆる酒気帯びの状態とされ、かなり不利になってしまう。ただ、こちらとしてはいきなり絡まれて精神的にもショックを受けているだろうから、「恐ろしい目に遭って動揺しているので、ちょっと落ち着くまで待ってください」などと言えば、覚醒剤使用や飲酒運転のケースではないので、呼気検査を受けるのを拒否できる。または、遅らせることができることが多いだろう。

また、大した被害を出していなくても、日頃からの行いが悪ければ、強く手が当たった程度でも戒告を受けることがある。郵政民営化の前の事例だが、エアメールの仕分けを頼まれた若い郵政事務官が「(年寄りは)横文字が読めないのか」などと軽口を叩いたのを上司に注意された。職務上必要だということでその様子をメモに取っていた別の上司の手をその若者が払い、それが暴行であるとして問題になったのだ。この件は、行為後の反省がなかったこと等も考慮され、暴行に関する診断書の作成もなかったが、処分は適当との判決が下っている。

弁護士 野澤隆

1975年、東京都大田区生まれ。都立日比谷高校、早稲田大学政治経済学部政治学科卒。 弁護士秘書などを経て2008年、城南中央法律事務所を開設。
(唐仁原俊博=構成 小原孝博=撮影)
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