社員食堂が社員に有効に活用されるかどうかのカギを握るのは給食サービス業者だ。前出のカルピス社員食堂の店長、西洋フード・コンパスグループ、山口晴生さんは「同じ顔ぶれの1000人近いお客様がほぼ毎日来店する。一般の飲食店では考えられません。お客様が飽きずに満足してもらえるかが永遠のテーマです」と社員食堂ならではの難しさを説明する。

業界大手のシダックスでは、利用者のニーズが最近変わってきたと分析。

「ここ数年、女性社員の意見を社員食堂に反映させる傾向が強まっています。その結果、サラダなどの野菜を豊富に取り入れたり、スイーツを充実させる企業が増えました」と広報部。優秀な社員を確保するため、社員食堂を福利厚生の目玉にしようとする姿勢を感じるという。

さらに、全く新しいサービスに取り組む給食企業も出てきた。

エームサービスが日産自動車やキヤノン等で導入している「自産自消」は、自社の社員が畑で作った野菜を、自社が運営する食堂で消費する。食の安全から「顔の見える野菜」が注目されているが、「自産自消」は野菜を作った本人が食堂の利用者の目の前で調理して実際に顔が見えるかたち。広報室の神薗真英室長は「畑も首都近郊休耕地を借りています。食の安全という観点だけでなく、将来的には担い手不足の農業を手伝うようなかたちで、社会貢献にも通じるようなサービスを目指します」と語っている。

本社移転などを契機に社員食堂のリニューアルを行う大手企業が増え、社員食堂は大きく変貌を遂げた。社員食堂の身体そのものへの影響はどれほど期待できるのだろう。