いまより大きな仕事、重い責任をふられることは、プレッシャーでもありますが、それはまぎれもないチャンスなのです。

昇格や人事異動は会社員であればほとんどの人が経験することです。上司から「今度からマネージャーをやってみない?」と打診されて「私には無理です」と、バリアを張って断ってしまう人がいます。

せっかくきたチャンスを、「とりあえず、今回はいいです」「いえ、まだ私には早いです」などと言って断ってしまう人は、上司にとってもどかしく見えるだけでなく、自分を過小評価することで逃げ・守りに入っているようにも受け止められかねません。

「○○さんはすごい、それにくらべて私は……」と自分の弱点を気にしすぎると、「言い訳が多い人だ」と思われてしまうのとよく似ています。

なぜ、チャンスを与えられたのに挑戦しないのでしょうか。もちろん挑戦しなければ失敗もしません。「ぬくぬくゾーン」にとどまっていることができます。その気持ちもわかります。でも、「無理です」といい続けて今の状態を維持できる、というのは錯覚にすぎません。なぜなら、いまのままでいれば、後から来た後輩がどんどんあなたを追い越していくからです。つまり、あなたの相対的な成長曲線が下降線をたどっていくのです。

一度断ってしまったらチャンスはしばらく訪れない

チャンスを断るのは、「私はキャリアの成長曲線が下がってもいいです」と宣言しているのと同じなのです。昇格を断ると、多くの場合、遅からずこんな気持ちになりがちです。

「最近、仕事がつまらなくなった」

こうなってからでは遅いのです。一度、変化するチャンスを断っているのですから、上司も期待をかけなくなっています。

「もしマネージャーになっていたらもっと成長できていたかも」と後悔したところで後の祭りです。チャンスがあったら、とりあえずつかんでおく。これが鉄則です。

打診された仕事をやりたくないのなら、自分が本当にしたいことは何かを伝えるべきです。上司が戸惑うのは「マネージャーはやりたくないけれど、じゃあ何をしたいかといわれれば、えーと……」とはっきりしない人です。

たとえばそこで、次のようにはっきり意思表明できた場合はどうでしょうか。

「マネージャーをやるよりも、もう1度あのイベントをちゃんと成功させたいんです」

断るにしても「前向きな理由」になっていれば、上司からも「責任感がある」とか「見所がある」と評価されるでしょう。

過去1年間を振り返って、昇格や異動などのチャンスから逃げてしまったと思い当たる人、そして今の仕事が楽しくない、やはり自分を変えていきたい、と感じている人は、上司からの打診は当分来ないと覚悟してください。厳しいことを言うようですが、チャンスを棒にふったのはあなた自身なのですから。上司の期待をとりもどすには、普段から意識して強めに意思表明することをすすめます。

オフィシャルな面談の場でなくてもいいのです。たとえば飲んでいる時に、上司が「もう、この仕事、きみに任せてもいいかなと思ってるんだ」という話の流れになったら、そのポイントを逃さずに、「ありがとうございます。ぜひやらせてください」と引き受ける。変化を前向きに受け止める決断をすると、仕事を進めていく上での大事な決断を、前向きにできる習慣がつきます。

いまより大きな仕事、重い責任をふられることは、プレッシャーでもありますが、それはまぎれもないチャンスなのです。

※この特別連載では、プレジデント社の新刊『サイバーエージェント流 自己成長する意思表明の仕方』(7月15日発売)のエッセンスを<全5回>でお届けします。