テスラの事故以来、自動車の自動運転についての議論が盛んだ。テスラ モデルSの「自動運転」は何が問題だったのか。また、自動運転とは“未来の夢の技術”か、それとも“人が死なない”技術なのだろうか?
テスラ「モデルS」

ここのところ自動運転に対する議論が活発になっている。きっかけは、5月のテスラの自動運転車「モデルS」による死亡事故だ。自動運転の安全性を疑問視する報道も多かった。

しかし結論から言えば、これによって自動運転の安全性を議論するのは間違っている。むしろ問題なのは、テスラが“運転支援システム”にすぎない「オートパイロット」を“自動運転”と呼んでいたこと、そして運転支援システムの“思想性”をないがしろにしてきたことの2点である。

自動運転にはレベルがある

まず、1点目の “自動運転”という呼び方について考えてみよう。現在、クルマの運転自動化については、NHTSA(米国運輸省道路交通安全局)の政策方針がベースになっており、国土交通省もこれに準じている。

【レベル0】自動化なし
常時、ドライバーが、運転の制御(操舵、制動、加速)を行う。
【レベル1】特定機能の自動化
操舵、制動または加速の支援を行うが操舵・制動・加速の全てを支援しない。
【レベル2】複合機能の自動化
ドライバーは安全運行の責任を持つが、操舵・制動・加速全ての運転支援を行う。
【レベル3】半自動運転
機能限界になった場合のみ、運転者が自ら運転操作を行う。
【レベル4】完全自動運転
運転操作、周辺監視を全てシステムに委ねるシステム。

現在、公道を走っている車は、レベル2までで、レベル1と2はあくまでも「運転支援」であって「自動運転」ではない。事故を起こしたテスラのモデルSもレベル2の「運転支援」に該当する。