「モノが売れない時代」と言われて久しい。だが、そうした状況でも、値下げ競争に陥らず、高額商品を多くの人に売って成功する方法がある。

チラシやウェブサイトは、自社の商品やメッセージを多くの人に知ってもらえる格好のメディア。しかし、それゆえに陥りがちな罠がある。自分が知らせたい情報を、チラシやウェブページのトップに置いてしまうのだ。だが、顧客が読みたいのは、あくまでも買い手目線の情報。それを無視して売り手目線の情報をトップに置いてはいけない。

最初に価格を示すと、買ってもらえない

人間は紙や画面を見るとき、「Z」、あるいは「F」の字を書くように視線を動かすといわれている。Zパターンは、まず一行目を左から右に読んだ後、真ん中はざっと把握するように流し読み、最後に左下から右下に視線を動かす。画像や図などのビジュアルが多いものは、視線がZパターンになりがちである。

Fパターンは、一行目を左から右に読み、視線を左に戻した後に下にズラし、再び右に動かす。下に行くにつれて右端まで読まれなくなるので、視線はF字に近くなる。Fパターンは、インターネットのユーザービリティを研究しているヤコブ・ニールセン博士が、232人を対象に行った実験で判明した。ウェブページは、ZよりFのパターンが多くなる。

どちらのパターンにしろ、大切なのは左上にある最初の一行だ。ここで顧客の興味を掻き立てないと、続きを読んでもらえない。だからトップの位置には、売り手目線の情報ではなく、顧客の心をつかむ「キャッチコピー」を置くべきである。

では、どのようなコピーが顧客の心に響くのか。実際にチラシで売り上げを増やした自転車店を例にして解説しよう。

キャッチコピーでは、売りたい商品の機能的価値ではなく、情緒的価値を訴える。電動自転車を売り出したいなら、「たくさん荷物を運べます」と機能説明するのではなく、「知っていますか? 電動自転車の実力!」と、知らないと損をするのではないかと危機感を煽る。このようにいきなり感情に訴えることで、読み手を惹きつけるのである。