企業が時代を超えて求められる存在であり続けるには、以下の11の領域で経営を進化させ、経営全体を最適化することが必要だ。

(1)市場
(2)顧客
(3)意味(用途・役割)
(4)製品(商品)
(5)価格
(6)ブランド
(7)サービス
(8)課金方法
(9)販路
(10)販売方法
(11)コミュニケーション

全体最適を図る詳しいプロセスは、上梓した『価値づくり進化経営』(日本経営合理化協会刊)に譲るが、今回は(2)の領域で「顧客の進化」に取り組んで成長する企業事例を通じて、そこでの具体的な進化への取り組みと、踏まえるべき最適化のポイントを3つ抽出する。

デパートの販路でギフト需要を開拓

ヨックモックの「シガール」。

中東のUAE(アラブ首長国連邦)の富裕層にファンを生み出して成長する企業、それがヨックモックだ。

クッキーの「シガール」で知られる洋菓子ブランド「ヨックモック」を展開する(株)ヨックモック(藤縄武士社長)は、売上高190億1707万円(2014年度のヨックモックグループ全体の売上高)で、全国の有名デパートを中心におよそ160店舗を出店している。

同社はギフト需要を中心に、デパートチャネルを活用したビジネスを展開して成長してきた。羽田空港と東京駅には直営店を持ち、お土産用商品や限定品などを販売するほか、OEM事業として他社ブランドによる商品開発とその生産も行っている。

キャラメリエ(キャラメル職人)の称号を受け、ショコラティエとしてフランスで3本の指に入るアンリ・ルルー氏が持つ企業を買収し、「アンリ・ルルー」をブランドとする事業も2007年に立ち上げている。

同社は海外にも早くから販路を拡大し、海外店舗の1号店として1986年にアメリカのビバリーヒルズにあるデパート「ニーマンマーカス」に出店し、以降30年間にタイ・台湾・香港・マカオ、そして近年ではUAEに進出している。日本と同様にアメリカでもニーマンマーカス、サックスフィフスアベニュー、バーグドルフグッドマンといった高級百貨店を中心に約50店舗を展開している。