検索サイトなどでおなじみの米・グーグル社の次世代技術の開発を行う機関、「グーグルX(エックス)」。その創設者が、長年人工知能の研究に取り組んできたセバスチャン・スラン氏だ。人工知能によって、我々の生活がどう変わるのか、取材した。

家にドラえもんがやってくる!

「今、私の隣には『プレジデント』誌の取材を受けるために通訳の“人”がいます。でも、いずれその仕事は人工知能(AI)に奪われるかもしれません」――人工知能研究の第一線で活躍してきたセバスチャン・スラン氏の話を聞いて、パッと頭に思い浮かんだのが、「ドラえもん」がポケットから取り出す「ひみつ道具」の一つ、「ほんやくコンニャク」だ。
「グーグルX」の創設者、セバスチャン・スラン氏
それを食べると、あらゆる国の言葉を、まるで母国語のように話したり、聞いて理解したりできるようになる。これが現実のものとなれば、たしかに通訳や翻訳の必要性がなくなる。ドラえもんは、のび太くんを救ってくれる存在だが、はたして人工知能は、人類を幸せにしてくれるのだろうか。

「私が人工知能に出合ったのは大学時代です。その頃、私は“人”が大好きで、魅了されてさえいたのです。心理学、哲学、医学について勉強し、そのうえで人工知能を勉強しました。その結果、『人工知能を研究することは、“人”を理解するための最良の手段であり、最も建設的な方法である』ことに気づいたのです。

同時に、人工知能は人を超えていく、そして人間の生活を大きく変容させるもの――つまり近い将来、シンギュラリティ(人工知能が人間の能力を超えたときに起こること。技術的特異点)は必ずやってくると考えました。

ドラえもんの話は、とてもすばらしい喩えですね。当然ながら、私は人類をよくするために人工知能と向き合ってきました。そういう意味では、私の目指しているものはドラえもんと同じですね」