超低金利だからこそ安全を確保しつつ
上手に資産を増やす

昨年秋のリーマン・ショック以降、運用環境は大きく変化した。株式市場はバブル後最安値の水準が続き、世界的な低金利政策を受けて、日本の金利も一段と低くなってしまった。

大手銀行の定期預金金利は、2008年10月に期間3年で0.5%だったものが、09年2月24日現在、0.25%と半減(300万円未満、税引き前)。人気の個人向け国債は、昨年7月発行分の変動金利型(変動10)の初回金利1.0%が、今年1月発行分では0.58%(税引き前)。「変動10」は長期国債10年ものの金利を基準金利とするが、1月時点で1.38%だった基準金利は今後、1%を割ることも予想される。定期預金金利が5~6%もあった時代を覚えている人には納得のいかない水準だろう。「こんな金利では運用なんてムダ」と思うかもしれない。

しかし、こんな状況だからこそ、資産運用に本気で取り組む必要がある。もし、大手銀行やゆうちょ銀行などで確実に資産が増えるとしたらリスクはとらないほうがいい。が、現実は、元本保証の商品では資産が増えず、将来インフレが起こったときに目減りしてしまう危険性がある状況だ。だからこそ、あえてリスク商品を取り入れて、資産全体で収益アップを目指す必要があるわけだ。

ビジネスでキャリアを積んだ年代の人なら、経済知識と判断力を資金運用にも活かせるはずだ。着々と迫る老後に向けて、できるだけ早く本格的な資産運用に取り組んでほしい。運用する商品を選ぶ前に注意したい点をあげておこう。

まずは、資産だけ見るのではなく負債とのバランスを考えること。もし住宅ローンが残っているなら、まずは繰り上げ返済を実行する。「退職金で返済すればいい」と思っている人も多いが、その時点で退職金を減らしてしまうと、70代~80代に向けて運用すべき元本が減ってしまう。繰り上げ返済は早く実行するほど支払利息を減らせるので、早いうちに返済して定年退職までにローンを終わらせておきたい。

また、投資対象を日本だけでなく世界に分散することも考慮したい。米国の政策金利は0.25%と日本の0.1%に近い水準まで下がっているものの、ユーロは2%、オーストラリア・ドルは3.25%(09年2月24日現在)と日本よりはるかに高い水準を保っている。また、日本では少子高齢化が進み大きな経済成長が期待できないという現実や、食料自給率が先進国で最低水準の40%以下にすぎないという弱みは何も変わっていない。長期的なインフレリスクを考えれば、円資産だけでは不十分だろう。さらに、今後の経済成長に期待するなら、やはり新興国への投資を取り入れたい。昨年来の暴落を見れば投資しにくいが、たとえば積立投資の一部に新興国ファンドを選んではどうだろうか。

さらに、金融商品の保障制度についても考慮したい。最近ではネット定期預金や個人向け社債といった、比較的高い金利を得られる商品も登場している。高い金利を提示するには、何らかの理由があるはずだ。たとえばネット定期なら店舗経費がかからないといった理由のほか、銀行が資金調達に苦しみ高い金利を提示せざるをえない、といったケースもありえないことではない。ネット定期に限らず、1つの銀行に預けるのは預金保険の範囲内の1000万円以下に留めるのが無難だ。また、債券については発行体の経営状況を確認すること。“100年に一度”の不況だからこそ、安全を確保する手段を忘れてはならない。

(構成=有山典子)