あなたはどうして話すのだろう。人を叱るためか、物を頼むためか。最も重要なことは、「誰に」「なにを」ではなく、「なぜ話すのか」である。相手や場面に応じ、目的をみつめなおすことで、話し方は劇的に変わる──。

部下の「言い分」を聞く姿勢が重要

若い世代をうまく叱れない。そんな悩みをよく聞きます。世代が違えば、価値観も異なります。私の世代も“新人類”と呼ばれ、よく上の世代から「おまえたちは理解できない」と言われました。しかし、叱れないのは価値観の問題なのでしょうか。

ビジネスは人間の価値観よりも結果が優先される世界です。叱責が必要なら、価値観という曖昧なものではなく、結果が伴わなかった原因や問題があった行動を、客観的な事実に沿って、部下が納得するまで説明しなければなりません。

つまり部下を叱るポイントは、部下が納得感を抱けるかどうか。これは、どんな世代にも通用するポイントであり、部下をもつ人間であれば、必ず身につけるべき話し方なのです。

たとえば「毎朝、挨拶をする」という目標を掲げたとします。翌朝、無言で出社してきた部下に対し、「なんでおまえはみんなと同じことができないんだ!」「いつも同じことを言わせるな!」と怒るのはNGです。

これでは自分の価値観を押しつけ、感情をぶつけているだけです。価値観が違うからこそ、丁寧に、論理的に説明すべきです。私は「事実、影響、感情、尊重」という4段階で話すことをおすすめしています。

はじめに「今日、君は挨拶しないまま席に着いたね」という事実を話します。次に「君が挨拶しなければ、君の後輩も同じようになるよ」と周囲への影響を指摘し、「期待していたのに、とても残念だ」と上司としての感情を伝えます。そこで忘れてはいけないのが、相手を尊重する言葉です。最後に「君はどう思っている?」「何か理由があったのか?」と添えると、あなたに対する部下の印象は大きく変わります。自分の言い分を聞いてくれる、と思うからです。

ミスをした部下に対して「どうして失敗したんだ?」という聞き方は感心できません。こういう質問をすると、部下の頭は言い訳で一杯になります。

「予想外のトラブルのせいで」
「こんな事情があって」

そんな言い訳をいくら並べられても次にはつながりません。部下には「どうすればうまくいったと思う?」と問いかけるのがいいでしょう。こうすると、謝罪や言い訳ではなく、失敗を踏まえて、どう改善していくかについて、話し合うことができ、成長を促すことになります。