昨春の社長就任時に「国際線を拡大したい。10年後には南米やアフリカなどにも路線網を広げたい」と意欲を示したのは、全日本空輸を傘下に持つANAホールディングスの片野坂真哉社長。2015年度は全日空の国際線利用者数が初めて日本航空を上回った。16年度も拡大方針を維持し、中国・武漢やメキシコシティなど5つの国際線を追加する。ベトナム航空に出資して共同運航を始めるほか、ミャンマーでも現地財閥と合弁で航空会社を設立した。今年1月、欧州エアバスの超大型旅客機「A380」の3機導入を発表。定価ベースだと3機合計で1500億円。スカイマークが11年に6機の購入契約を結び経営破綻する一因となった高額機だ。ANAは19年からハワイ路線に投入を計画している。

ANAホールディングス社長 片野坂真哉(AFLO=写真)

航空業界には「片野坂氏はアグレッシブで、いけいけドンドン」(幹部)との評もある。昨年1月には経営企画担当の副社長として、25年度の連結売上高を1.5倍の2兆5000億円にする長期戦略もまとめている。

野心的な拡大戦略の背景には、国の支援を受け劇的な復活を遂げた日本航空の存在もある。17年3月期の純利益見通しはANAの800億円に対し、日航は1920億円。公的資金の注入を受けた日航は競争で優位に立ちすぎないように新規路線や投資をこれまで制限されてきたが、来年度からそのくびきが解かれる。「ANAは日航が自由に動けない今年度までに、少しでも差を付けておきたいはず」(関係者)との指摘も。片野坂氏の手腕に注目が集まりそうだ。

 
ANAホールディングス社長 片野坂真哉(かたのざか・しんや)
1955年生まれ。東大卒。79年全日本空輸入社。取締役、副社長などを経て2015年4月社長。
(AFLO=写真)
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