「血液型性格診断」に科学的根拠がないことは、すでに心理学の実験で証明されている。多くの人はそれを半ば理解したうえで、「しょせんは遊びだから」と軽く考えて話題のネタにしている。だが血液型性格診断には遊びでは済まされない問題が含まれている。

どうせ「結論ありき」の人。聞かれたら即、「Z型」といおう<br><strong>大阪大学サイバーメディアセンター教授 菊池 誠</strong>●1958年生まれ。東北大学大学院理学研究科博士後期課程修了(理学博士)。専門は学際計算統計物理。SFの解説や翻訳も手がける。
どうせ「結論ありき」の人。聞かれたら即、「Z型」といおう
大阪大学サイバーメディアセンター教授 菊池 誠●1958年生まれ。東北大学大学院理学研究科博士後期課程修了(理学博士)。専門は学際計算統計物理。SFの解説や翻訳も手がける。

4冊累計で500万部を突破した『自分の説明書』シリーズで最初に発売されたのは「B型」だった。ネガティブに評価されやすいB型を取り上げれば、読者の関心を集められると考えたのだろう。これはB型が差別されているという証拠にほかならない。血液型という後天的に変えられない属性への差別は、陰湿でタチが悪い。

この問題が根深いのは、「血液型で性格が決まる」という問題設定が十分に科学的だからだ。「物質はなくならない(=質量保存の法則)」「無からエネルギーは生じない(=エネルギー保存の法則)」といった科学の基本法則に反した問題設定ならば、即座に「間違っている」と判断できる。だが血液型は「性格とはまったく無関係」とはいえない。科学的には「個人の性格に影響するほど強い関係はない」とまでしかいえない。しかし、血液型性格診断を否定する理由としてはそれで十分である

近年、『水からの伝言』という本が話題を集めた。芸術的な氷の結晶の写真を紹介しながら、「水に言葉をかけると、結晶の形がその言葉に影響される」という話を解説したものだ。「ありがとう」「平和」は美しい結晶を作り、「ばかやろう」「戦争」は作らないなど、言葉と結晶とのあいだには一定の関係があるという。この場合ならば即座に科学に反しているとわかる。