不振の理由を探る、顧客を分析する、効果的に販促する……。そんなとき、情報のプロたちは何をするか。2014年、データサイエンティスト・オブ・ザ・イヤーに輝いたJALの渋谷直正氏をはじめ3人が、そのワザを明かしてくれた。

“分析の対象や目的を明確に定める”という分析の第1ステップ(http://president.jp/articles/-/18160)をクリアできたら、次のステップは“商品やサービスを購入する消費者の心理を知る”ことだ。

花王の場合、社員のちょっとした一言が、分析担当者が消費者心理を掴む大きな助けになったという。同社マーケティング開発センターデジタルビジネスマネジメント室の佐藤満紀氏は「社員から『お店で洗剤と漂白剤、芳香剤を一緒に買っている人をよく見かける。他社のものと一緒に買っていることも多いよ』と言われてひらめいた」と振り返る。

花王 デジタルビジネスマネジメント室 永良 裕氏(左)、佐藤満紀氏(右)

「A商品とB商品が頻繁に同時購入されている」ということを調べる“バスケット分析”と呼ぶ手法は、分析ではごく一般的に使われるものだ。

だが花王のように多くのカテゴリーの商品を生産している場合、対象となる商品を絞り込むことが難しく、さらに他社商品との併買を調べるとなると、計算は余計に複雑になる。

そこで花王は、社員の一言をきかっけに、洗剤、漂白剤、柔軟剤、消臭剤という“洗濯関連商品”に絞って、どの商品とどの商品が併買されているかを分析することにした。分析は自社の商品に絞らず、他社の商品も対象にした。その結果、漂白剤「ワイドハイターEXパワー」が多くの製品と併買されている、という事実を突き止めるに至る。

タワーレコードの取り組みも、花王と共通する部分がある。オンライン事業本部の前田徹哉氏は「社員同士の会話の中で、『50代のベテランアーティストのAと20代の新人アーティストのBは、両方好きっていう50代の女性が意外に多いよね』という話が出た」と話す。実際に調べると、それを裏付けるデータがあった。

タワーレコードも多くのECサイトと同様に、過去に購入した商品履歴から、利用者が興味を持っている可能性が高い商品を勧める、というレコメンドのシステムを持っている。だが、先の50代の女性の例のように、一定の傾向はあっても全体の母数からすれば少ないデータは、システムによる自動的な計算だけではうまく生かすことができない。