スルガコーポレーションは暴力団との癒着で破綻

新規に契約を交わした相手が、暴力団の構成員が資金獲得のために経営する会社、いわゆる“企業舎弟”だとわかったら……。彼らは反社会的勢力であり、コンプライアンス上からもただちに契約を破棄すべきである。企業舎弟の場合だけでなく、取引先が契約後に不祥事を起こし、経営トップが逮捕された場合なども同様だ。

だが、契約を破棄すれば恐喝的な行動に出られる恐れや、債務不履行(民法415条)により損害賠償請求を起こされる可能性も考えられる。けれども、それを恐れて契約を続行してしまうと、今度は社会的信用を失墜するリスクが発生してしまう。

いずれのケースも、ポイントは契約の結び方にある。契約の段階で十分な与信管理や周辺調査に努め、危なければ契約をしないのはもちろん、契約後にネガティブな情報を把握した場合はノーペナルティで解約できるよう契約書に盛り込んでおくべきだ。

契約とは、リスクを相手方に押しつける交渉である。日本では昔から空気と安全はタダだと考える風潮があった。が、会社を取り巻く法的環境がグローバル化する中では発想の転換が求められる。

多発する企業不祥事に伴い、コンプライアンスという言葉が頻繁に聞かれるようになった。しかし、正しく理解されているかというと心許ない。“法令遵守”という訳語が先走り、経営の現場では、法律や政令、省令を守れば十分という誤解がある。

2008年6月に破綻したスルガコーポレーションのケースを例に挙げよう。同社が立ち退き交渉を依頼した不動産会社の社長らが、弁護士法違反の疑いで逮捕された。立ち退き交渉は法律行為であり、弁護士以外の者が報酬を得て交渉を行うことは違法。しかも、この不動産会社は暴力団と関係のあることが報道された。同社の株は報道後ストップ安となり、銀行からの融資も滞った結果、破綻に追い込まれたのである。