学情が発表したデータによると、トップ100社中79社は、昨年と同じ顔ぶれだった。人気企業の共通点とは──。

学生人気への影響は採用広報の熱心さ

「最もランキングに関係するのは“採用広報にどれだけ力を入れたか”ということです」

学情が運営する「あさがくナビ」の乾真一朗氏はこう指摘する。例えばANA、JALに次ぐ3位に入った伊藤忠は「採用広報に力を入れています。最近も新聞に岡藤正広社長の若手時代を描いた広告を出すなどしており、学生の間での人気や知名度が高いです」(乾氏)。伊藤忠は昨年から1つ順位を落としたものの、近年、安定して上位に食い込み続けている。

ファーストリテイリングの100%出資会社であるジーユーの躍進も、採用広報活動の効果を示している。今回の調査から、ジーユーと、同じくファーストリテイリングの100%子会社であるユニクロと別々にランキングを公表している。その結果ジーユーは25位と、ユニクロの169位を大きく上回った。この理由を乾氏は「ジーユーは様々な就職系イベントに出展するなど採用広報に非常に力を入れていました」と説明する。

採用広報の次に影響するのが企業の業績だ。ただし、「多くの学生は決算書などで実際の数字を確認しているわけではなく、メディアでニュースになった業績の良し悪しを判断材料にするケースが多い」(乾氏)。伊藤忠は商社のトップに立ったことが盛んに報じられたため、業績という点でも学生に好印象を与えたようだ。その一方で丸紅、住友商事、三菱商事、三井物産といった他の大手商社は軒並み順位を落としている。

他の業種でも、業績の低下などが盛んに報じられた企業は順位を落としている。シャープや東芝は200位圏外になり、マンションの傾斜が話題になった住宅系メーカーもその多くが順位を落とした。

全体的に順位を上げたのが食品だ。乾氏は「食品は景気との連動性が低い業界といわれています」と語る。

大手企業約1300社が加盟する経団連は、2017年度入社の大卒・大学院卒の新入社員の採用活動時期を去年に続いて変更した。広報活動の開始時期は3月からと変わらないものの、筆記試験や面接などの選考活動は2カ月繰り上がった6月になった。乾氏は「採用時期が2年連続変わったのは今回が初めてです」と語る。

この変更が就職活動を難しくさせている。広報の開始から選考までがわずか3カ月しかないため、「学生が3月から企業研究をしていたのではとても間に合わない」(乾氏)からだ。

そうした状況を受け、今年急激に増えたのが「1dayインターンシップ」と呼ばれるインターンシップの形態だ。1日だけで手軽に参加できるプログラムが特徴で、1月から2月にかけて集中的に開かれた。

インターンシップは本来、学生に一定期間、実際の労働を体験させるもの。だが、この1dayインターンシップは、必ずしもそうとは言えない。乾氏は「実際は、会社説明会もどきのものになっているものも散見されます」と指摘する。つまり1dayインターンシップの中には、広報活動を少しでも早く開始し、学生への知名度を高める目的で行われているものも多いのだ。

1dayインターンシップについては、大学側から「インターンシップには当たらない」として、問題視する声があがっているという。だが、「学生はこうした機会も利用して情報を集めないと、就職活動に出遅れてしまうという状況になっている」(乾氏)。

今年の就職活動は、学生に複雑な状況での舵取りを迫る、シビアなものになっているようだ。