五輪切符獲得に安堵の涙

気のせいかな、愛らしい顔がたくましく変わっていた。リオデジャネイロ五輪の出場権をかけた女子バレーボールの世界最終予選(東京体育館)。コートには、全日本のセッター、21歳の宮下遥(岡山シーガルズ)の気迫に満ちた姿があった。

五輪出場をかけた戦いの重圧とはいかばかりなのだろう。イタリアから2セットを奪い、五輪切符を獲得した日、気丈なセッターは試合後、安堵の涙をながした。

「日本オリンピック委員会(JOC)公式サイト」より

群がる記者の前でこう、漏らした。「自分で自分をほめるわけじゃないですけれど、がんばったなと思います」と。

才能は文句なし、である。2009年、中学のとき、岡山シーガルズでV・プレミアリーグに史上最年少の15歳2カ月でデビューした。前回のロンドン五輪の翌年の2013年、夏のワールドグランプリでは全日本としてコートに初めて立った。

銅メダルに輝いたロンドン五輪後、名セッターの竹下佳江さんが引退した。その熾烈な後継者争いの中、大型セッターの宮下が生き残った。魅力はなんといっても、177cmの身長である。竹下さんより18cmも高い。バレーボールにおいて高さは武器となる。ブロックができるし、スパイカーまでの距離が短くなるため、攻撃にスピードを生み出すことができるのだ。速攻も効果的になる。

さらにいえば、宮下はサーブもスパイクレシーブもいい。ただ、トスさばきの安定感は竹下さんより見劣りする。焦ると、トスが微妙に乱れてしまう。まだ硬い。スパイカーにとっての打ちやすさ、いわば“やさしさ”が欠けているな、と映る時がある。