「すべすべ」か「さっぱり」か脳波で検出

Amazonで「脳科学」と検索すると、書籍だけで5000件に近い商品がズラッと表示される。それだけ脳に関心のある人が多いということだろうが、最近では、脳科学を商品開発の分野に活かす動きも活発になってきている。

例えば、化粧品大手の資生堂では、化粧品を使った人が実際にどう感じているのかを脳波を用いて検出する調査を行っている。「すべすべ」と感じているのか「しっとり」なのか、「さっぱり」なのか。今まではこのような使用性については高度に訓練された専門家が担当していた。それ以外にも、実際にモニターが使ってみた感想のアンケート等は行っていただろうが、脳波を用いたこの方法なら通常のアンケートでは浮かび上がってこない、率直な感想を得ることができるわけだ。

そして、脳科学はついに赤ちゃんの成長、教育に関わる商品、つまりおもちゃの開発にも応用され始めた。

わが子には賢く、そして人の気持ちが理解できる優しい人間になってほしい――。子の親ならば、誰もが心に抱く願望だろう。その実現の一助となるようなおもちゃが今年2月、玩具メーカー大手のバンダイから発売された。商品名は、「やさしさ育つよ なかよしアンパンマン」。言わずと知れた、子どもに大人気のアニメ『それいけ! アンパンマン』のキャラクターを使った知育玩具だ。

バンダイのプレイトイ事業部のゼネラルマネージャーを務める村瀬和絵氏はこう語る。

「やさしさ育つよ なかよしアンパンマン」

「『なかよしアンパンマン』は、脳科学の研究や検証結果から得られた知見を活用して作ったおもちゃです。アンパンマンの人形をはじめ、哺乳瓶、ご飯、スプーン、ハブラシなどアンパンマンの世界観を再現した小物11点がセットになっており、人形を使った見立て遊び、いわゆるおままごとをして遊びます。見立て遊びは言語の発達を促し、人の気持ちを理解する能力や想像力も育むことがわかっています。脳科学の見地から、子どもが見立て遊びをしたくなる工夫を盛り込みました」

バンダイは、日立ハイテクノロジーズ、日立製作所と慶應義塾大学との共同研究によってこの商品を開発した。検証では、17~18カ月齢児32名を対象に、絵本を読み聞かせる際に人形とモノ)ご飯、ハブラシ、毛布など)を1つずつ子どもの前に置き、人形を使って見立て遊びを見せながら読み聞かせた場合と、人形を使わずに読み聞かせのみを行った場合を比較。人形による見立て遊びを見せたほうが、読み聞かせ後に自分で見立て遊びを行う回数が増えることがわかった。

開発に携わった日立製作所研究開発グループ基礎研究センタの主任研究員を務める佐藤大樹氏はこう話す。

「見立て遊びは、目の前にはないものをほかのモノで代替して表現する“象徴機能”という、人間にしかない高度な機能の発達に効果があります。この象徴機能が言語能力と密接に関係していることもわかっています。『なかよしアンパンマン』は、子どもに適切な刺激を与え、健やかな成長を促すおもちゃなのです」