日本にコンビニエンスストアを根付かせたカリスマ経営者、鈴木敏文会長の突然の退任表明で噴き出したセブン&アイ・ホールディングスのトップ人事をめぐる内紛劇。スッタモンダの末、新社長に中核子会社セブン-イレブン・ジャパンの井阪隆一社長の就任で決着した。

セブン&アイHD社長 井阪隆一(ロイター/AFLO=写真)

一連の騒動の発端は、鈴木会長が提示した井阪社長更迭案が取締役会で否決されたこと。井阪氏はセブン-イレブン社長在任中、5期連続最高益を達成。「これまでの実績を認めてもらえないのは非常に残念」と更迭案に納得せず、鈴木会長に反旗を翻した。創業家の伊藤家や伊藤邦雄・一橋大学名誉教授ら社外取締役なども井阪氏の支持に回ったことで、20年以上もトップに君臨してきた鈴木氏は退任に追い込まれた。

5月26日の株主総会後、「井阪新体制」が発足。井阪氏はセブン-イレブンの大卒社員1期生として入社後、自主企画ブランド「セブンプレミアム」の立ち上げなど商品開発を中心にコンビニ事業一筋で歩んできた。実績の積み重ねが鈴木会長の目にとまり、51歳の若さで初の生え抜き社長に抜擢された。

目下、グループ内の総合スーパー、イトーヨーカ堂が上場以来初の営業赤字に転落。傘下に収めた百貨店のそごう・西武も不振が続く。セブン-イレブンが利益の大半を稼ぐとはいえ、多岐にわたる業態を抱える巨大流通グループをどう束ねていくのか。騒動のしこりも残るなかで、“コンビニのプロ”の前途は多難といわざるをえない。

 
セブン&アイHD社長 井阪隆一(いさか・りゅういち)
1957年生まれ。青山学院大学卒。80年、セブン-イレブン・ジャパン入社。2009年社長。5月26日にセブン&アイHD社長に就任。
(写真=ロイター/AFLO)
【関連記事】
鈴木敏文・セブン&アイ会長辞任の「本当の理由」
80歳以上の経営者を「老害」と呼んでいいのか
セブンvs.Amazon戦争勃発! 安売り時代の終焉とオムニチャネル時代の到来
伸びるコンビニ。苦戦するスーパー、百貨店
「コーヒー戦争」激化! 生き残る会社、沈没する会社