主力事業を失った富士フイルムは、古森会長の手腕で見事にV字回復、その後も新たな成長分野で、次々と成果を挙げている。中長期的な戦略は、どのように決断されているのか。膨大な情報の中から、本当に価値のある数字や情報を見つけるには。

経営は必ず数字で結果が表れる。現状がしっかり把握されていて、戦略が明確かつ戦術が実践的であって、あとは遂行力が発揮できれば、最終的に計画したその数字が達成できる。「数字ありき」ではないが、戦略や戦術が正しかったか、実行力があったかはすべて数字で見ることができる。

私が社長に就任した2000年、主力事業だったカラーフィルムなどの写真感光材料の売り上げはピークを迎えていた。当時、売り上げ全体に占める割合は6割、利益の3分の2を占める稼ぎ頭だった。ところがデジタル化の波にさらわれて、その市場があっという間に消失してしまった。

富士フイルムホールディングス代表 取締役会長兼CEO 古森重隆氏

そういう中で、今何が起きているのか、何が起きつつあるのかを正確に掴みとり、会社として何をするべきかを考えた。経営はそれを数字に落とし込む必要がある。衰退する事業の売り上げはどれくらい減るのか、増えると見込まれる事業や新事業はどれほどの売り上げ、利益になるのかを数字で示す。

手を打ったことはすべて数字につながる。企業は生き物と同じで成長し続けること、つまりゴーイングコンサーンが基本だ。存在し続けるために、何を減らし、やめるのか、逆に、何を加えるかを判断することが重要だ。