ICT活用の効果を生かしきれていない

【三宅義和・イーオン社長】英語教育改革が目指す日本人の未来像について、お伺いします。最近、ICTを活用した教育の効用がよく言われます。語学との相性もかなりいいことは間違いありません。これは文部科学省だけではなく、総務省も含めて、国策として推進されていくのではないかと思いますが、文科省ではこのICT教育、その活用について、どのような議論がなされているのでしょうか。

向後秀明・文部科学省教科調査官

【向後秀明・文部科学省教科調査官】実は、現行の学習指導要領にも組み込まれています。高等学校を例に取り上げますと、「情報通信ネットワーク等を適宜活用して、指導に生かす」ということです。ところが、そう言いながらも、教室のICT環境の整備が追いついていない。例えば、タブレット端末を使おうとしても、校内LANが通っていない学校が多いのが実情です。これについて、政府では、総務省を始め関係諸機関において、小・中・高校における無線LANの導入に向けてさまざまな検討を行っていくことになると思います。

さらに、教員のICTリテラシーの格差が大きすぎる。そのために、効果的な指導法が共有できていません。実は、これは先生がたの年齢というよりも、ICTに対する興味、姿勢の違いだと思います。さらに、ICT活用に適した教材が、まだ十分には揃っていないのです。今、ようやく学校に入り始めたという感じでしょうか。

ICTに関するこうした課題は、できるだけ早期に解決する必要があると思います。なぜなら、ICTを活用することによって、英語の4技能の向上に大きなインパクトがあるからです。ただし、ICTは効果的に使う必要がある。ポイントは3つあると考えています。1つ目は対話的な学びにおいてICTを使う。例えば、得られた情報を活用して、発表、討論、交渉といった言語活動を行うときにICT機器を活用する。プレゼンの際に効果的に使えば、皆さんが情報を共有しやすい。

2つ目は、ICTによって学びを深化させるということです。例えば、与えられたテーマについて、より多くの情報を収集して、整理するといった場面での活用です。この活動は、リーディングとライティングが中心になります。与えられたテーマが女子教育なら、一昨年、ノーベル平和賞を受けたマララさん関連のテキストを収集し、人権問題にまで深掘りしてまとめるといったやり方も考えられます。そうすれば、おのずと深い学びにつながります。

3点目は、主体的な学びですね。これは学習を振り返るとか、主体的に自己評価をして次のステップに進んでいくときに、タブレットなどが身近にあると、多様な角度からの見方ができるはずです。とはいえ、またまだ日本の学校では、ICT機器が持つ大きな効果を十分に活用しきれていません。