高級オーディオ担当はプロのジャズピアニスト

スピーカー1本で100万円以上、アンプとオーディオをセットにすると500万円を超える――。高級オーディオブランド「テクニクス」が2010年10月からの生産終了期間を経て、14年9月に復活を遂げた。オーディオの市場規模が縮小をたどるなか、パナソニックはなぜテクニクス事業に力を注ぎ出したのか。同事業担当役員で、パナソニック史上2人目の女性役員を務める小川理子さんに復活のシナリオを聞いた。

パナソニック役員 小川理子(おがわ・みちこ)
1962年、大阪府生まれ。慶應義塾大学理工学部卒業。86年松下電器産業(現パナソニック)に入社。音響研究所などを経て、15年4月に役員としてテクニクス事業担当、15年11月よりアプライアンス社常務ホームエンターテインメント事業担当。兼ホームエンターテインメント事業部長。兼テクニクス事業推進室長。

【弘兼】まるで宇宙を漂っているようでした。先ほどのテクニクスのリスニングルームで音を聴いている間は、それくらい浮遊感があった。

【小川】ありがとうございます。

【弘兼】テクニクスブランドがはじまったのは1965年。僕が松下電器(現パナソニック)にいた70年当時から、テクニクスの製品は飛び抜けて高級なオーディオだった。あの頃は社会人になってお金を稼ぐようになったら、まずは車とオーディオを買うというのが若者の1つの夢だった。だから僕らの世代の多くの人はテクニクスブランドに憧れを抱いているはずですよ。

【小川】実際、今オーディオマニアと呼ばれる人は男性、なかでも年配の方が多い。でも私は、女性にもいい機器があれば、こんなにいい音で音楽を楽しめるというのをわかってもらいたい。男性はオーディオ機器を数字で判断しがちですが、女性は直感的です。聴いてみていいと感じたら20万円でも買う。その意味でオーディオの世界はまだまだ可能性がある。女性が欲しいと思えるオーディオの提案もテクニクスの役割だと思っています。