エレベーターやタクシーでの移動中、新しい上司や得意先とふたりきりになったら、さて、何を話題にしたらいいのか。会話が盛り上がること間違いなし! 業界人も知らない極上のネタをあなたに。

「あなたはなぜ福の神なんですか?」

証券アナリストという仕事柄、上場企業の社長から株式投資に興味を持つ個人投資家まで、さまざまな人と話をする機会があります。その際に心がけているのは、誰にでもわかりやすい事例と比較しながら説明することや、企業に共通の課題である「人材の問題」を話題にすることです。初対面のときには、まず自分がどんな人間なのかをわかってもらい、そのうえで相手の話を聞くようにしています。そこで名刺には社名や証券アナリストの肩書だけでなく、「相場の福の神」や「ITストラテジスト」と入れています。ほとんどの人が「なぜ福の神なんですか?」と聞いてくるので「実はラジオ番組で……」と説明し、会話の糸口にする。

取材当日にその会社の株価が上がっていれば「ありがとうございます。相場の福の神が来たので、株価が上がっていますよ」、下がっていたら「ありがとうございます。今日は下がっていますが、相場の福の神に会ったので、明日からは上がると思います」と言う。どちらの場合も「ありがとうございます」から始めることで先方は気分がよくなるし、「この人は面白いな」「話しやすいな」と思ってもらえます。また、あえて「ITストラテジスト」の肩書を入れることで、多少はITの知識があり、IT関連の基本的な説明は省けることを伝えられるでしょう。

会社のビジネスモデルを説明してもらう際は、自分にどの程度の知識があるかをあらかじめ伝えます。「『会社四季報』の情報と御社のホームページの情報は拝見しましたが、3500社を見ているため御社をじっくり研究する時間がなくて申し訳ありません。セクターアナリストではないので、この業界に詳しいわけでもありません。最初から教えてください」と自分をオープンにすれば、教えてくれるものです。

会話を続ける技術は、場数を踏めば自然と身につきます。ただし、話題の準備は必要です。投資の世界では、過去と同じようなことが何度も起きるもの。つまり、過去との比較が役に立ちます。それを可能にするのが過去の蓄積です。蓄積がなければ情報量を増やす努力をする。私が勤務していた証券会社では、新入社員は毎朝、「日経新聞」を隅々まで読み、気になった記事の切り抜きを作って発表していました。これは投資家との話題作りにも大いに役立ちました。アナリストは企業を訪問し、情報をもらうことが仕事です。私は情報をもらったら、「実は他社さんからこんな話を聞きました」など、先方に「ヒントになった」「いいことを聞いた」と思ってもらえる情報をお返ししています。このギブ&テイクは関係性の構築にも役立っています。