「橋下徹さんが大阪府知事になったのを、私も間近で見ていたんです」

そう語るのは、朝日新聞社代表取締役社長の渡辺雅隆氏だ。当時、大阪本社の社会部長だった渡辺氏は、選挙前の座談会で司会を務めた。その場で当意即妙の橋下節を目の当たりにし、「さすがテレビの世界にいただけのことはある。なかなかの人が出てきたな」という印象を受けたという。

渡辺雅隆
朝日新聞社代表取締役社長。千葉県出身。1982年に朝日新聞社に入社し、大阪本社社会部長、管理本部長などを経て、2014年より現職。

橋下氏は大阪府知事時代、大阪市長時代を通じて、メディアを最大限有効に活用するだけではなく、ときには衝突することも辞さなかった。渡辺社長は当時を振り返り、「その間、うちの記者たちはものすごく鍛えられました」と懐かしんだ。ぶら下がりや定例会見の場で、橋下氏はしばしば記者に対して怒りをあらわにした。質問のレベルが低いと感じたり、記者が勉強していないと感じたりすれば、その場で指摘するのはもちろん、ツイッターに書き込むこともあった。記者たちにとっては、自分の発言を非難されるなど、かつて経験したことのない異常事態だ。

メディアからの注目度が高いため、取材現場が生中継されているという場面もあった。橋下氏は朝日新聞にもしっかりと目を通していたので、へたな発言をすれば、「自社の記事すら読んでいないのか」と言われかねない。記者たちは自分の発言の一言一言に神経を尖らせる必要があったのだ。

「普段からのほほんと取材をしているわけではないが、橋下さんへの取材の際、記者は一層緊張感を持って臨んでいたように思います。結果として、取材の質も上がったのではないでしょうか」(渡辺氏)

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