年間100店舗ペースで出店する日本一のうどんチェーン。急成長の秘密は、常識破りの経営にあった。「うどん」を武器に、世界の列強入りが見えてきた!

水道光熱費は一般的な飲食店の倍

「丸亀製麺の売りは、製麺のシーンそのものです。席数を削ってでも、どんな小さな店でも、製麺機だけは背負っていきます」

そう語るのは、丸亀製麺を運営するトリドールの粟田貴也社長だ。外食チェーン店において、業務効率化、味の均一化のためにセントラルキッチンは欠かせない。そんな常識を覆したのが、うどんチェーンの「丸亀製麺」だ。すべての店舗に製麺機を設置し、店員が麺を打つ。2000年に1号店を開店して以来、順調に伸ばした店舗数は、国内だけで800に迫る。

讃岐うどんの製麺所にマーケティングの極意を見たという粟田社長。常識破りの外食チェーンを急成長させ、25年にはトリドール全体で世界6000店舗、売り上げ5000億円、さらには世界外食企業ランキングトップ10入りという挑戦的な目標を掲げる。トリドールの成長の原動力と、今後の展望を探った。

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10年後、世界の外食企業ランキング10位以内を目指す!

1985年に兵庫県加古川市で創業したトリドール。当初、粟田社長は焼き鳥チェーンを全国展開し、上場するという夢があった。商売はまずまずの状態だったが、転機が訪れたのは、97年ごろのことだった。

「父親が香川の出身で、しばしば足を運ぶ機会はあったのですが、当時は讃岐うどんブームのはしりといえる時期でした。讃岐の製麺所に何気なく行ってみると、名もない店にもかかわらず県外からのお客さんで長蛇の列ができていたんです」

一般的な讃岐うどんの製麺所は、その名のとおり、食堂というよりも工場というべきかもしれない。おしゃれな内装も、行き届いたサービスもない。店内に誰もおらず「裏の畑にいます」と張り紙されていることすらある。

粟田社長が訪れた店も、夫婦らしき年配の男女が2人で麺を打ち、ゆで、どんぶりによそい、だしをかけたものが100円、というような典型的な製麺所。そんなところに、わざわざ県外から車に乗ってやってくる客がいる。本州から来ようと思えば、時間だけではなく、瀬戸内海を渡るだけで何千円とかかる。