漠とした不安。湧かぬ意欲。取れない疲れ……。そんな心の病巣を、外科医の捌くメスのように的確に探り当てるのは、古今の碩学の紡いだ英知の言葉。小説家・須藤靖貴氏に、その珠玉の数々を選び抜いていただいた。

他人と比較して
ものを考える習慣は、
致命的だ。
――B・ラッセル●英・哲学者

「おそらく不幸の最も強力な原因の一つ」であるねたみの感情について記した『幸福論』6章より。しかし、嫉妬深さの原因を自覚しただけでも治癒の方向に踏み出したことになるとしている。

苦しいから逃げるのではない。
逃げるから苦しくなるのだ。
――W・ジェームズ●米・心理学者

米国各界に影響を与えた哲学者・心理学者。外部からの刺激を知覚した身体が直接変化(逃げる)し、それが情動(苦しい)を生むという、一般常識とは真逆の「情動理論」を提唱、論争を呼んだ。

人が不可能だと思っているときは、
やりたくないと決めているときだ。
――スピノザ●蘭・哲学者、神学者

デカルト、ライプニッツと並ぶ合理主義哲学者。「私にはできません」という物言いが謙遜ではなく、単に言い訳であることを見抜いた一言。「善だから努力するのでなく、努力するから善なのだ」との一言も。