漠とした不安。湧かぬ意欲。取れない疲れ……。そんな心の病巣を、外科医の捌くメスのように的確に探り当てるのは、古今の碩学の紡いだ英知の言葉。小説家・須藤靖貴氏に、その珠玉の数々を選び抜いていただいた。

楽観的であれ。
過去を悔やむのではなく、
未来を不安視するのでもなく、
今現在の「ここ」だけを見るのだ。
――A・アドラー●オーストリア・心理学者

勇気のある人は楽観的である。過去のことをグズグズ考えたり、先行きを心配したりせず、気持ちをただ今、できることだけに集中する。闇雲な悲観主義は、一見、賢そうにみえても、見る人から見れば滑稽に思える。

悲観主義は気分によるものであり、
楽観主義は意志によるものである。
僕は幸せだから笑っているのではない。
逆である。
笑うから幸せなのだ。
――アラン●仏・哲学者

気分屋は、すぐ悲しみや怒りに捉われる。幸福を得るには、意志と自己克服が欠かせぬという 主張が前者(『幸福論』断章93)。後者(同77)は前出アドラー、後出のW・ジェームズとも通底する。

怒りは無謀をもって始まり、
後悔をもって終わる。
――ピュタゴラス●古代ギリシャ・数学者、哲学者

万物の根源を数と目し、独自の学派を立ち上げて「ピタゴラスの定理」を見出した。怒りにまかせて動くと、おおかたよくない結果が待っているとの戒め。