日本の音楽シーンを支えてきた編曲家の存在

“5人目のビートルズ”と呼ばれた名プロデューサー、ジョージ・マーティンが3月8日、逝去した。このことを受け、ポール・マッカートニーはオフィシャルサイトで一つの思い出をこう振り返っている。

<ジョージ・マーティンは僕に『ポール、この曲に弦楽四重奏を加えるという考えがあるんだ』と言ってきました。『いやいや、ジョージ。僕たちはロックンロール・バンドなんだ。それはいいアイディアとは言えないな』と僕は答えました。労わるような優しい口調で、偉大なるプロデューサーである彼は僕に言いました。『試してみよう。もしうまくいかなかった時は弦楽器を入れずに、君のソロ・ヴァージョンでいけばいいじゃないか』。>

名曲「イエスタデイ」の誕生秘話である。当初、ポールの弾き語り案だったものを、ジョージの発案でアレンジが変えられたというものだ。否定的だったポールが試してみてそのアイディアを受け入れた結果は、誰もが知る通り。アレンジ(編曲)が、いかに重要かを改めて思い知らされるエピソードだ。

『ニッポンの編曲家 歌謡曲/ニューミュージック時代を支えたアレンジャーたち』川瀬泰雄、吉田格、梶田昌史、田渕浩久著 DU BOOKS

歌は時代を振り返る時、必ずと言っていいほど“その時流行った曲”として紹介される。誰もが、自分の心に響いた歌があり、何年も何十年も大切にしていたりする。

その際、歌い手の凄さや、作詞家、作曲家の偉大さを語られることはこれまでも数多くあった。しかし、一般的に見て、なかなか陽の当たらないポジションに甘んじていたのが編曲家の存在である。本書は、その編曲家にスポットを当て、日本の音楽シーンを支えてきた編曲家へのインタビューを中心に構成されたものだ。