体育会の魅力が薄れている理由

最近、エントリーシートや面接で人事担当者に嫌われるのが「安定」という言葉です。志望動機に「貴社は経営も安定しており……」と書いてくる学生はいらないと語るのは石油会社の人事課長です。

『人事部はここを見ている!』溝上憲文著(プレジデント社刊)

「今のようなビジネス環境の変化が激しい時期に欲しいのはチャレンジ精神旺盛な学生。安定志向の学生は必要ありません。エントリーシートに『安定』の文字が見つかれば、それだけで書類選考で落としています」

誰もが安定した会社に入りたいのが本音でしょう。でも採用試験では禁句。面接でも注意しましょう。
コミュニケーション力やチームワーク力は昔も今も人事部が好きな言葉ですが、見極めるポイントは学生時代の活動にあるそうです。住宅会社の採用担当者は「大学内外で人と人を結びつける役割を担ってきた人。たとえば、箱根マラソンは学生主体で運営されますが、協賛企業との対応など運営委員をやった経験のある人は欲しい」と言います。

体育会系といっても選手ではなく、マネージャーなどチームをまとめるために裏方でがんばってきた人は評価が高いようです。しかし、中には「スポーツ団体の幹事を一生懸命やってきましたと書いてあったので面接しましたが、仲間と3人で作ったサークルと聞いてがっかりした」(IT企業の人事課長)という話もあります。

企業の体育会系人気は今も変わりませんが、なぜ体育会系なのでしょうか。金融業の人事担当者はこう言います。

「“不条理な世界”を経験しているからです。体育会に入ると上級生の命令は絶対です。たとえ間違っていても耐えながら従うしかありません。その世界を生き抜いてきた学生は不条理だらけの会社人としての耐性を備えているからです」

でも最近は民主的運営の体育会も増えている。運輸業の人事担当者はこう指摘します。

「『うちは下級生、上級生に関係なく皆の合議で運営し、楽しくやりました』なんて言う学生もいます。我々が期待している体育会の魅力がだんだん薄れています」

この会社はそれまで体育会枠で採用していましたが、やめてしまったそうです。

※本連載は書籍『人事部はここを見ている!』(溝上憲文著)からの抜粋です。

【関連記事】
出身大学は出世にどこまで影響するのか
人事部が「何としても欲しい」学生
「人事部座談会」採用面接のウラ側、教えます
マツコ・デラックス断言「体育会系社員は30代で終わる」説を人事部長に聞いてみた
「仕事内容」より「労働条件」ばかりを聞く学生はいらない