女子高生がまちづくりを担う「鯖江市役所JK課」プロジェクトによって、福井県鯖江市が総務省「ふるさとづくり大賞」の総務大臣賞を受賞した。これを機に、JK課を担当する鯖江市市民協働課の高橋藤憲氏とJK課のプロデューサーである若新氏が、設立からの2年間を改めてふり返り、市民との連携や行政職員のあり方について語り合った。

JKは「得体のしれないもの」

【若新雄純】高橋さんがJK課の担当になって2年ですね。担当になった時は、事前に相談もなく、公務員だから拒否権もなく、JK課の担当を言い渡されたわけですよね。その時はどう思いました?

【高橋藤憲】マジか……? というのが本心でした。

【若新】不安とか?

【高橋】“JK”という得体のしれない存在が市役所を闊歩する姿を想像した時に、その後、市民がどのように反応するのか怖かったですね。

【若新】それ、面白いですね。今は高校進学率が97%を超えていて、日本の女性のほとんどがいわゆる“JK”を経験します。つまり、JKは特殊なものではないはずなのに、まちづくりにJKが関わるとなると、JKを何か「得体のしれないもの」として捉える人が多くいました。これって、何なんでしょうね。

【高橋】女子高生に対して、「つかみどころがない」と感じるんでしょうね。彼女たちとあまり接したことがないというのも大きいです。市民協働課では大学生と連携していますので、女子大生との接し方は分かっているつもりでしたが、その1つ下の世代である女子高生となると、どう接すればいいのか、難しいなと思いました。

【若新】しかも、市役所って公的なもので、なんか“聖なる場所”のようなイメージがありますしね。本当は、全ての市民が利用する権利を持っているわけですが。

【高橋】公務員は常にきちっとしてなきゃいけない、という空気はありますね。以前、市役所の女性職員2人が市内で公用車を運転中に、面白い話で盛り上がって、車内で大笑いしたらしいんです。それを見た市民が、市に通報してきたんです。「公務員が公用車に乗って大笑いしている。何事だ!」と。

【若新】公用車内で大笑いすることの是非は別として、少しでも気が緩んだり、乱れたりしただけで公務員は叩かれる世界なのに、そこにJKという得体のしれないものが入ってくる。女子高生が決して社会的に何か悪いわけでもないのに、つかみどころのない、得体がしれないものが入ってきた時に、それまであった秩序が乱れるんじゃないかという不安があるわけですね。だから、一方的にルールや規律を押し付けようとしてしまう。若い市民や若い女性に公共活動やまちづくりに関わってほしいと言いながらも、市役所はますます行きづらい場所になりますね。