軽減税率協議は「素人」政治家のその場しのぎ

安倍政権が「2017年4月に間違いなく10%にし、同時に軽減税率を導入する」と決意を表明してきた消費税増税。食料品などの税率を8%に据え置く軽減税率をめぐり、適用範囲などについての与党自民・公明両党の協議は難航し、「刺身の盛り合わせは生鮮食品か加工品か」といった末端・低次元の議論にエネルギーを消耗させていた。

税制は本来高い技術を要するものだ。素人の政治家がこのようにその場しのぎでいじればいじるほど、消費税制の欠陥はますます拡大する。議論の対象とすべきは、枝葉末節ではなく消費税そのものであるべきだ。

その消費税の増税が国民経済に与える被害が甚大であることは、言うを待たない。1997年の消費税3%から5%への増税が慢性デフレを引き起こし、14年の5%から8%への増税は、せっかくのアベノミクス効果を台なしにしてしまった。

景気の先行きに対する懸念が深まる中、1年後の税率アップは、再び「増税デフレ」を招き、安倍政権が掲げるGDP600兆円という目標をぶち壊すという最悪のシナリオを招く可能性が高い。

安倍政権が決断すべきは、消費税「増税」ではない。消費税「減税」である。世間の意表をついて14年4月の税率アップ前の水準である5%に引き下げ、消費意欲を喚起し、内需を拡大することが、経済活性化の切り札となろう。カナダなどの事例にもあるように、消費税率は状況に応じて上げ下げしてしかるべきだ。一度上げたら二度と下げられないかのような思い込みは、一刻も早く頭から振り払うべきだろう。

そこで問題になるのが、代替財源をどう確保するかである。