ロッテホールディングス(HD)の取締役を2015年1月に解任された重光宏之氏が、プレジデントオンラインの取材に応じた。宏之氏は創業者の重光武雄氏の長男。ロッテグループの経営権を巡って創業家のお家騒動が続いている。その舞台裏を直撃した。

虚偽やそれに近い理由で追い出された

――現経営陣に対する現在の気持ちは。

大変残念なことが起きたので、早く解決したい。ロッテホールディングス(HD)社長の佃(孝之)さんは私を虚偽やそれに近いような理由で追い出した上、現経営陣は創業者である重光武雄会長の代表権も剥奪してしまった。そんな人間たちが経営者として居座っていることは大変残念なことだと思っています。

――宏之さんは2014年12月、ロッテHDの副会長やグループ会社の取締役を解任されたわけですが、なぜこのようなクーデターが起こったのですか。

重光宏之・ロッテホールディングス前副会長

きっかけは2014年後半から年末にかけて佃さんが代表取締役会長をしていた父、重光武雄に虚偽や著しく誇張した説明をしたことからです。佃さんに促され、会長は私の解任に同意しました。その後12月にはロッテHDから取締役の辞任を求められ、そして26日にはロッテHDの取締役会で副会長の解職が決議されました。その後グループ会社計26社の取締役も解任されました。

――佃社長は武雄会長にどのような話をしたのでしょうか。

もともと佃さんが社内を活性化させたいということで、1億円までの新規事業を募集したのです。その中に私が代表取締役を兼務していた子会社の社員が出した提案があり、それが審査を経て最終的に残ったのです。ただ、金額は1億円では済まないものだったのでそれをどうしようかという話になり、佃さんが議長をしていた取締役会にかけて全会一致の承認を得、支払いも必要な決裁を受けていました。ところが佃さんは、みんなが止めたにもかかわらず、私が勝手に事業化を進めて、大きな損失を出したかのように会長に報告したのです。しかも組んだ相手は私の悪い友人で、会社のお金をだまし取られた、と会長に再三再四、吹き込んだようです。実際には佃さんが議長をしている取締役会で全会一致で決めたことですし、支払先は上場している大手電機会社の子会社です。いい加減な会社ではありません。それを会長には捻じ曲げて報告してしまったのです。

――それは取締役議事録にも載っていることですから、すぐに誤解を解くことができたのではないですか。

会長はいったん相手を信じるとなかなか考えを変えない。それを納得してもらうのに時間がかかってしまいました。それでも7月になって、会長も騙されたことに気が付いたんです。それで7月3日に業務報告に来ていた佃さんを厳しく詰問して、辞任を求めたわけです。佃さんは「長い間お世話になりました」と言って下がっていったのですが、辞めずにそのまま居座ってしまいました。本人は「自分は辞めるとは言ったが、いつとは言っていない」と言って開き直っているそうです。韓国を担当していた弟はそれまで全ての人事について決裁を仰いでいた会長の了解を得ることなく7月15日に勝手にロッテHDの代表取締役にも就任している。

会長は92歳(当時)とかなりの高齢で、2011年ごろから、韓国の執務室に常駐していたのですが、「事態を収束させるためなら日本にでもどこにでも行く。取締役たちにもいくらでも事実を説明する」と言ってくれました。そして会長自ら7月27日にロッテ本社に赴いたのです。取締役を辞めさせるのは、株主総会でしかできませんので、まずは職務権限をなくして解職しました。その上で新たに執行役員を任命して会社の運営に当たらせるようにしたのですが、現経営陣たちはこれも事実を曲げて対外的には「取締役を解任しようとした」と発表しました。佃さんはこれまでに私を含めて7、8人の役員を辞めさせ、自分たちの息のかかった者たちを役員にしています。そして7月28日にはとうとう創業者である会長をロッテHDの代表取締役から解任し、名誉会長に棚上げしてしまいました。