男性ばかりが借金を重ねるわけではない。ショッピングやギャンブルなどで多重債務に陥ったり、日々の生活のやりくりのなかで借金が膨れ上がる女性も多い。とりわけ、無収入で夫の同意が得られないと借りられない専業主婦の悩みは深刻のようだ。

東京23区内の賃貸マンションに住む主婦、Bさん(50歳)はサラリーマンの夫(55歳)と娘(20歳)の3人家族。上場企業に勤める夫の年収は約1000万円。娘は幼稚園から私立に入り、現在は有名私立大に通って、傍から見れば“勝ち組家族”に映るだろう。しかし――。

Bさんの夫は家庭を顧みない仕事人間で、娘が生まれてからは会話すらほとんどなくなっていた。Bさんは娘に愛情を注ぎ、“お受験ママ”へと変貌していく。娘には常にブランドものの服装を身に着けさせ、塾へも熱心に通わせた。自分自身は質素な生活をしていても娘には最高の教育、最高の身なりをさせていた。

ところが、収入とのバランスがいつしか崩れ、自分の借金どころか夫のカードにも手をつけるようになり、10年前に計300万円の借金が夫にばれてしまったという。夫に詫びて、返済したが、そのときの夫の怒りは思い出すだけでも震えが起きた。

この強迫観念は、「ばれたらダメ」という意識にいつしか変わっていったという。娘はその後、中学、高校、そして大学へ。一貫して私立に通うわが子は、ますます教育費用が嵩む。気がつけば、自分のカードで200万円、夫のカードで700万円、総額900万円の借金が立ちはだかっていた……。

一方、事業主も危機感を露わにする。東京・杉並区。駅から徒歩数分のダイニングバーは、約9坪でカウンター席中心の小さな店。10人ほどで満員になる店は、自家製サングリアやヘルシーしゃぶしゃぶなど手作りのメニューとともに、気さくで笑いが絶えないオーナー兼マスターのCさん(36歳)の人柄が人気を呼んでいる。

昨年6月、貯金300万円と銀行から200万円を借り入れ、店を居抜きで借りて念願の自分の店を開業した当時を、Cさんは次のように振り返る。

「ぎりぎりの資金で手元に残ったカネは100万円足らず。しかし、オープンしてから1カ月も経たないうちに、冷蔵庫やエアコンが壊れ、買い替えをしたら10万円も残らず、冷や汗ものでした」