出生率アップを妨げる筆頭格は、職場の男性上司。そう思いきや、女性社員を苦しめる張本人は、「味方」と思われた女性上司だった――。

政府は女性に「産め、育てろ、働け」

安倍政権は「一億総活躍社会」の3本柱の1つに「希望出生率1.8がかなう社会の実現」を掲げている。

この1.8という数字。

未婚女性の約9割が結婚を希望し、将来欲しい子どもの数2.12人といった調査を前提に弾き出したものだ。

だが、昨年の出生率は1.42。最後に1.8を超えたのは専業主婦世帯が共働き世帯を上回る1984年のことだ。

今では共働き世帯が1000万世帯を超え、逆転している。

しかも政府は「仕事」と「結婚・出産、子育て」が二者択一の構造から「同時実現」を目指すとしている。つまり、産んで、育てて、働けというのだ。

しかし、実現がいかに困難な課題であるかを浮き彫りにする1つの調査結果をお膝元の厚生労働省が発表した。

妊娠・出産を理由に職場で不利益な取扱いを受ける「マタニティーハラスメント」(マタハラ)の同省初の実態調査である。その結果は予想していたとはいえ、相当深刻だ。

産みづらく、復職しづらい環境があるのだ。

労働組合の連合が2013年5月に初の調査を実施したが、マタハラ経験のある女性は25.6%(2014年、26.3%)。4人に1人ということで驚いたが、サンプル数が300人程度と少なかった。

今回は約3500人の女性を対象に雇用形態別に調査している。妊娠・出産・育児等による不利益な取扱いを受けた経験のある人は正社員が21.8%、契約社員13.3%、パートタイマー5.8%、派遣社員48.7%だった。

正社員でも5人に1人以上、派遣社員に至っては2人に1人が経験している。

マタハラの内容(複数回答)は、「迷惑」「辞めたら?」などの権利を主張しづらくする発言が47.3%と最も多い。続いて「解雇」が20.5%、「雇い止め」が21.3%と多い。

これでは働きながら子どもを産み育てることを躊躇する人も多いだろう。派遣社員を続けている限り、子どもを産むのは御法度のような状態に置かれている。

妊娠前に働いていた女性の約60%が第1子出産前後に退職するというM字カーブの要因の1つがマタハラにあるとみることもできる。

また、そんなひどい仕打ちを見ていれば、未婚の女性社員も結婚しても働き続けたいとは思わないだろうし、未婚率の上昇にもつながっている可能性がある。