モルガン・スタンレー、楽天球団を経て起業。会員制転職サイトを開設し、創業6年で従業員は500人を超えた。経歴だけなぞると順風満帆そのものだ。だが、その裏には人並外れた意志と行動力、そして天性の明るさがあった。

メジャー全球団のGMに手紙で懇願

【田原】南さんは東北楽天ゴールデンイーグルス創設メンバーの1人だそうですね。もともとスポーツが好きだったのですか。

ビズリーチ社長 南 壮一郎氏

【南】ええ。父親の転勤で幼稚園からカナダのトロントで育ったのですが、そこにはブルージェイズというメジャーリーグのチームがあって地元から愛されていました。僕自身は子どものころからサッカーをやっていて、大学進学のためにボストンにいったときも続けていました。環境が変わってもやっていけたのは、心の支えとしてスポーツがあったからです。

【田原】アメリカのタフツ大学を卒業してモルガン・スタンレーに就職されたものの、金融業界は4年でお辞めになって、スポーツビジネスの世界に飛び込んだ。これはどうして?

【南】きっかけは日韓ワールドカップサッカーです。友達30人くらいで日本対ロシアを見にいったら、日本が見事に勝利しました。その瞬間がすごかったんですよ。みんな号泣して、知り合いだろうがなんだろうが構わず抱き合って喜びを表現した。僕の人生の中でこういう瞬間を何回味わえるのかと考えると、いてもたってもいられなくなり、何でもいいからスポーツに関わる仕事をやりたいと思うようになりました。

【田原】具体的には、どうしたの?

【南】まずアメリカのメジャーリーグの全球団のGMに、雇ってくれと手紙を書きました。ニューヨーク・メッツから「会ってもいい」と連絡があり、さっそく1週間後、飛行機に乗って話をさせていただいたのですが、結局は採用に至りませんでした。