「必ず返済する」意思表示の第一歩

2005年2月、りそなホールディングス(HD)は、預金保険機構が保有していた自社の普通株27億3000万円分を、買い戻した。90年代後半の金融危機以降、経営の維持に注入された公的資金。その総額の1000分の1にもならないが、ともかく返済が始まった。「りそな復活」へ動き出した瞬間、47歳のときだ。

りそなホールディングス社長 東 和浩氏

40代半ばは、嵐の真ん中にいた。グループの前身である大和、あさひ、近畿大阪の3銀行で、バブル経済の後遺症である不良債権が膨らみ、始まった公的資金の注入。その手続きを進める一方で、経営体制の立て直しを図る。あさひ銀行企画部時代からその役が続き、経営統合と合併を経てグループが誕生した03年、注入総額は3兆1280億円に達し、「実質国有化」と言われた。

この嵐は、じっと我慢していれば、台風のように過ぎ去ってくれるわけではない。国の支配から解き放されなければ、経営の自由度はない。だが、金融界やメディアだけでなく、社内でも「完済は不可能」と言う。でも、諦めない。03年6月、持ち株会社のりそなHDで財務部長となった。以来、「どうすれば返済できるか」と考えなかった日は、1日もない。

糸口は、04年から05年にかけて、見出した。再編の過程で分離していた信託銀行を、総合的な戦略を進めるために、吸収合併することを考えたときだ。合併へ向け、まずは完全子会社化を計画した。それには、全株式を買い戻さなければならないが、実質国有化で下がった価値からはじく価格では、株主の納得を得ることは難しい。では、どうするか。