社内のコミュニケーションが円滑なら、お互いが気持ちよく仕事ができ、効率も上がるのではないだろうか。では、風通しをよくするための方法とは? 特徴的な取り組みをする5社を探訪した。

スタッフの基本情報を検索できるアプリ

新興企業も負けてはいない。ファッション通販サイト「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイだ。7年連続で10%以上の売上高の拡大を遂げている成長企業である。

千葉市美浜区の本社を訪れると、オシャレな装いの社員たちがそれぞれ真剣な表情でパソコンに向かい、私語はほとんど聞こえてこない。12年から同社は「業務を効率化し、15時以降を有意義に使って、より人生を豊かにする」を目的に、6時間労働制を導入している。社員たちは雑談にふける暇はなさそうだ。

ただし、殺伐とした社風ではない。

「スタッフ同士が親友のように」を活動目的とする専門部隊「EFM(エンプロイ・フレンドシップ・マネジメント)部」も存在する。

「仕事は仕事だと割り切ったら、行動も心も仲間と会社から離れてしまうでしょう。会社を成長させるためにも、仲間とのつながりや会社への愛が必要だと信じています」

6名からなるEFM部を率いる梅澤孝之氏は真っ直ぐに理想を語る。具体的にはどんな施策を実施しているのか。

1つは「スタッフ名鑑アプリ」だ。10年前のZOZOTOWNオープン時は約20名だった社員は、14年6月末時点で633名に達している。社員同士が顔と名前が一致しないことが多くなった。一般の会社ならば当たり前の現象だが、スタートトゥデイでは看過されなかった。

EFM部が中心となり、社員全員の顔写真と名前、好きなファッションブランドなどを閲覧できる社内用アプリを開設。所属部署や趣味などのキーワード検索でお互いを探せる機能も付いている。

「SNSのようにメッセージを送る機能はありませんが、朝礼や飲み会で話題に出た人の顔や基本情報をすぐに確認できるようになりました」

【スタートトゥデイ】上:ランダムに選ばれた者同士が相手の好みを調べ、贈り物交換をするイベントを実施。下:スタッフの基本情報が検索できるアプリ。

ITを活用した社員名簿でありながら、実際に顔を合わせて仲良くなることが目的のツールなのだ。

EFM部は12年6月から約1年半、「FRIENDSHIP DAY」も実施した。全社員の中からランダムに選ばれた約20のペアが、お互いの好きなものを事前に調べ、毎月20日にプレゼントを交換するなどのイベントだ。プレゼント交換のための費用は、ZOZOTOWN内で使えるポイントとして会社から支給された。

お互いの事前調査には「スタッフ名鑑アプリ」が大いに活用されるが、せっかくの機会だからプレゼント交換前に食事に行こうというペアも少なくなかったという。

年末の全社総会や部活動など、社内交流を活性化させるイベントを会社が積極的に行うこともあってか、現在の離職率は数%。社員同士がお互いを知り、思いやり、気持ち良く仕事ができる環境ができあがっているためだろう。