簡単なやり方で家計を圧迫する医療費は節約できる! いざというときにあわてないためにどうしたらいいか。自らも長期の治療に直面したお金のプロが、経験をもとに解説する。

1. 高額療養費制度をフル活用する

大手メーカー勤務のAさん(42歳)は、月収約50万円。ある病気で1カ月入院することになった。Aさんにかかった医療費は100万円。しかし、Aさんは100万円を払う必要はない。Aさんが加入している健康保険の「高額療養費制度」が適用となるからだ。この制度は、医療機関に1カ月に支払う自己負担限度額(以下、自己負担)が一定額を超えると、超えた部分の額の払い戻しが受けられる制度のこと。自己負担は、年齢や所得によって決められており、Aさんの場合は8万7430円となる(図を参照)。

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100万円の医療費で、窓口負担が30万円かかる場合

ただこの制度は、いったん窓口で立て替え、申請手続きを行った後に還付されるというもの。一時的とはいえ支払いが大変な場合、「限度額適用認定証」を保険証と併せて事前に提示しておけば、窓口の支払いは自己負担までとなる(70歳未満の場合)。ちなみに限度額適用認定証は、2012年4月以降、外来でも適用となっている。

2. 高額療養費活用の変則ワザ!

もしAさんの病気の治療が長引けば、この制度はさらに威力を発揮する。直近12カ月以内に、3回以上高額療養費の支給を受けていれば、4回目から自己負担が下がる「多数回該当」のしくみが適用されるからだ。Aさんの場合、自己負担は4万4400円(70歳未満/一般)となる。またAさんが複数の診療科にかかる場合、様々な診療科のある総合病院等で、同じ月の間にまとめて治療を受け、できれば薬も院内処方で受けたほうが合算しやすくなり、自己負担の範囲内での支払いで済む可能性が高くなる。このほか、Aさんの医療費だけでは、高額療養費の対象にならない場合も、Aさんの妻など扶養家族が支払った医療費を合算できる(ただし、70歳未満の合算できる医療費は2万1000円以上)。この「世帯合算」のしくみで適用を受けやすくする方法もあるのだ。