高齢者が多い地方都市などで「食の砂漠」が広がる(写真はイメージ)。(PANA=写真)

高齢者が多い地方都市などで「食の砂漠」が広がる(写真はイメージ)。(PANA=写真)

低所得者層など社会的弱者が住む地域で商店街などが閉店し、生鮮食料品の供給体制が崩れて買えなくなってしまう現象を「フードデザート」(デザートは“砂漠”の意)と呼ぶ。そもそもは1970年代後半にイギリスでできた言葉で、単純に「買い物ができない」というだけではない。偏った食生活から低栄養状態となり、自立度の低下や要介護度の上昇を引き起こすことになり、さらには貧困や差別、社会的な孤立を生み出す要因として問題視されているのだ。

日本でも、買い物に遠出ができない高齢者が多く居住する地域でこの現象が広がっている。イギリスでフードデザートが起きた最大の原因は、規制緩和で大型店の郊外出店が加速したことだった。日本のシャッター商店街はイギリスのフードデザートがピーク時にあったときよりもひどい状況だ。

茨城キリスト教大学文学部准教授の岩間信之氏は、「フードデザート問題の背後には、深刻な弱者切り捨ての構図がある」と指摘する。岩間氏らの研究によると、そうした地域に住む人々は様々な社会サービスから排除されていることに加え、家族や地域コミュニティの希薄化から孤立状態にあるという背景がある。単純に「買い物に行ける」ことで解消する問題ではないわけだ。

この現象は低所得者層に広がる傾向がある。「今後は外国人労働者や若年層の間で拡大する可能性がある。また、大都市郊外のベッドタウンの住民の高齢化により、急速にフードデザートが拡大する恐れがある」(岩間氏)。食の砂漠化は食い止められるだろうか。

(PANA=写真)