基礎条件がよくないのに株価が高騰

中国の株式市場では、昨年来の高騰で5000を超えていた上海総合株価指数が、6月半ばから1月足らずで3300台まで下げた。

中国政府の株価維持対策でいったんは回復したが、長くは持たず、8月下旬には3000を切ってしまう。中国発の暴落は世界に波及し、ニューヨーク株式市場のダウ平均も急落、1年半ぶりの安値をつけた。2万円台で安定していた日経平均も、8月下旬の1週間で2800円以上も下げ、欧州や新興国の株式市場も総崩れとなった。

浜田宏一氏

9月上旬、私は北京で開催された金融機関主催のパネルディスカッションに招かれ、当地の現状を確認することができた。

上海発の世界同時株安は、目先の値動きに囚われがちな投資家の目には、世界の終わりのように見えたかもしれない。しかし上海証券取引所で起きた事件は、マクロ経済的に言えば、一時的に上がったものが、また元に戻ったというだけにすぎない。

上海総合指数は2013年半ばから14年半ばまで、2000強で低迷していた。それが、その後の1年間で2.5倍に膨れ上がっている。この間、中国の実体経済にはこれといって株価上昇につながるような要因はなかった。ファンダメンタルズ(基礎条件)がよくないのに株価が高騰したのは、中国金融当局の株買い上げによる株価引き上げ操作(PKO)と、メディアを通じた中国政府の投資家誘導の結果といってよい。