民主党の小沢一郎・前代表の辞任表明からわずか6日、鳩山由紀夫氏が新代表に選ばれた。スピード選挙を打ち出した小沢氏の行動から、筆者は「組織構築」のための要点を明らかにする。

なぜ小沢氏は後継代表を早期決着したのか

またまた自分の専門でもない、政治の話題になるが、今回の一連の騒動は、民主党前代表の小沢一郎氏がもつ「組織構築力」をまざまざと見せつけられた気がした。

組織構築とは、言葉は仰々しいが、簡単に言えば、組織のメンバーが納得する形で、人材に役割(仕事)を割り振り、役割間の関係を決め、組織として目標を達成するための体制づくりをする作業である。よく知られた「組織デザイン」が組織内の分業と調整に関する構造設計であることに対して、私の定義では、組織構築は、メンバーの納得という人間的な側面を含んでいる。その意味で、組織構築力はリーダーシップの大きな一部なのである。

そこでまず小沢氏について。騒動の始まりは自らの辞任である。タイミングがどの程度計算されたものかはわかりにくいし、マスコミの主な論調は批判的なようだが、いずれにしても、これより早い辞任は検察の追及に屈したと思われる心配があったのであろう。時を見計らっていたと考えられる。

ポイントはその後の動きだ。5月11日の月曜に小沢氏が代表辞任を表明、土曜の16日には後継代表に鳩山由紀夫氏が選出されたのだから、政治の世界にはめったにない超スピード決着であった。

大方の論調は、スピード決着をすることで、岡田克也氏をつぶしたというトーンのようだが、私はもう少し複雑な計算があったのではないかと思っている。今、民主党が衆議院選挙に勝つためには、鳩山氏だけではダメで、やはり岡田氏の応援がいる。党内のまとまりも必要だ。でも、岡田氏がトップであるという体制も小沢氏としては困ってしまう。そうなると、党内に大きな混乱なく、鳩山氏が代表で、岡田氏がその右腕という体制をつくらなければならない。さらに、自分のもつ特に地方での集票力を無駄にしない体制にしておくことが必要だ。小沢氏はこう考えたのではないだろうか。