年1.7%の経済成長率に対し、エネルギー消費量は

今年7月中旬、政府は2030年度における温室効果ガス排出量を13年度比で26%削減する目標を国連に届け出た。年末には、パリで「COP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)」が開かれ、すべての国が参加する国際的な枠組みについて合意される見通しだ。目標達成にあたって重要となってくるのが、日本のCO2排出量の約4割を占める電力の需給面における取り組みだ。

そのロードマップが、経済産業省が策定した「長期エネルギー需給見通し」にほかならない。これによれば、2030年度の電力需要の想定値は2013年度実績をやや上回る程度。となると簡単に思われるかもしれないが、その間、政府が示している経済成長率は年平均1.7%。経済成長とエネルギー消費は正比例する。かつて、経済成長時にエネルギー消費が増加しなかったことは例がない。

そこで求められているのが、徹底した省エネルギー対策ということになる。国内の主要産業や家庭など各分野で省エネに取り組む。長期エネルギー需給見通しの議論では、産業部門では、電気事業などそれぞれの業界がCO2排出削減目標を掲げ、革新的技術の開発や高効率設備の導入を図ることとしている。また、運輸部門においては2030年代までに、ハイブリッド車やクリーンディーゼル車などの普及を促進し、2台に1台を次世代自動車にするという。加えて、一般家庭部門においてもほぼ全住宅で省エネ化やLED照明を導入することが前提条件となっている。

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2030年「電力需給見通し」

一方で、これを賄っていく電力供給における電源構成、つまりエネルギーミックスはどうするのか。長期エネルギー需給見通しの基本方針として、エネルギー自給率が5%程度と資源の乏しい日本においては、「安全性(Safety)を大前提に、安定供給(Energy Security)や経済性(Economic Efficiency)、環境保全(Environment)を同時達成すること(S+3E)」が掲げられている。この方針に基づく2030年度における電源構成は、原子力が20~22%、再生可能エネルギーが22~24%、そして火力が56%とされた。

地球温暖化問題に詳しい電力中央研究所の杉山大志上席研究員は「政府が示した電源構成は、現在の政治状況のバランスをとったものとなっている」と評価しつつも、再エネを例に取れば「目標水準まで導入する場合、出力の安定性が課題となり、再エネ発電促進賦課金による負担に加え、系統安定化対策に必要なコストも発生する」との懸念も併せて示した。