日本の少子高齢化は皆が思っているよりも急速に進み、特に地方では若者どころか高齢者もいなくなる、と指摘して大きな話題を呼んだ『地方消滅』(中公新書)。その筆者である増田寛也氏が、地方創生の具体的な事例集として上梓した本『地方創生ビジネスの教科書』(文藝春秋)が発売され、若い読者の支持を受けている。地方創生のために今できることとは? 増田氏に話を聞いた。

全国896の市区町村が「消滅可能都市」

増田寛也氏。1951年、東京都生まれ。東京大学法学部卒。建設省を経て、岩手県知事、総務大臣を務める。2011年より日本創世会議座長。2013年、全国の市町村の約半分に当たる896の自治体に“消滅”の可能性がある調査結果を公表。『地方消滅 東京一極集中が招く人口急減』(中公新書)は大きな反響を呼び、2014年の新書大賞1位に選ばれた。「地方問題」の第一人者として活躍中。
――昨年出版された『地方消滅』は、大きな話題を呼びました。少子化は重大な問題ですが、すでに日本はその段階を超えており、本格的な人口減少社会に突入しています。実際に「消滅可能都市」として、全国で896の市区町村が実名で発表されていました。

増田寛也氏(以下敬称略):はい。消滅可能都市とは、人口の再生産を担う20歳から39歳の女性の人口が、2040年までに5割以下に減少すると試算されている自治体のことで、日本全国の約半分にあたります。人口減少の原因は2つあります。1つは、95%の子どもを出産する20~30代の女性が減っていること。そしてもう1つが、地方で子どもが生まれても若者は東京に集中してしまうが、東京は結婚して子どもを生み育てるのに必ずしも望ましい環境ではなく、結果として子どもが生まれないということです。地方から若者を吸い込む東京では、人口は再生産されない。地方が消滅し、人口は減っていく。地方だけではなく、東京も危ないのです。

――そうした問題提起をされた『地方消滅』に対して、今回発売された『地方創生ビジネスの教科書』では、地方で活躍する若い人たち、新しいビジネスモデルや成功事例をたくさん紹介しています。この2冊はどういう関係にありますか。

『地方消滅』で問題提起したことに対して、『地方創生ビジネスの教科書』で答えを提示した……という関係です。“優秀な人は東京へ行き、地方には公共事業しかないから仕事が見つからない”というのはステレオタイプだと思うんです。若い人にとって、大企業に行くことがベストの選択ではない、ということを感じてもらえたらうれしい。地方には無限に資源がある。自己実現の選択肢を広げてほしいです。

――確かに『地方創生ビジネスの教科書』は、若い人が読んで面白い本ですね。

20~30代の人に読んでほしいですね。新しいビジネスを起こすヒントが詰まっていますから。この本には「よそ者」「馬鹿者」「若者」が出てきます。よその地域からやってくる人、若い人、そして馬力がある人が、変化を起こしていくんです。