3Mの医療用製品を生んだ軍隊の解析専門家

今回は「リードユーザー(Lead user)」を探し出す方法について紹介しよう(実は前々回、紹介すると予告していたのに1回遅れになりました。お許しください)。この連載ではユーザーイノベーションを取り上げてきた。ユーザーがメーカーより先に製品イノベーションを考えつき試作品までつくっている場合がある。そうした製品イノベーションは誰もが行っているわけではなくリードユーザーという特定のユーザーが行っている傾向がある。

リードユーザーの特徴は次の2つだ。一つが、市場のトレンドや平均的ユーザーより、はるかに先行したニーズを持っていること。つまり、一定数以上のユーザーが後に解決したいと思うようになる問題に直面していること。二つ目がそうした問題を解決する(先行ニーズを満たすイノベーションを行って、それを使用する)ことで本人が大きな便益を受けること、である。

リードユーザーの存在と特徴が明らかになったことでメーカーにとって画期的製品を開発する手法が一つ増えることになった。リードユーザーを探し出し、そこに学べばよいのだ。

リードユーザーを活用した製品開発で成果をあげた、3Mの医療用画像解析製品の開発チームの事例を紹介しよう。医療用画像解析ではいかに早い段階で腫瘍を検知できるかがカギになる。そこで当初、開発チームは画像の解像度を飛躍的に高めることを目標にしていた。

ところが、リードユーザーから学ぶ手法を採用したチームが最終的にたどり着いたユーザーは高解像度を実現しているユーザーではなく、軍で働くパターン解析の専門家だった。彼らは軍事偵察の専門家から「木の下に見えるものが岩なのか弾道ミサイルの先端部分なのか判別できる解析データが欲しい」と言われていた。そこで重視されていたのは、高解像度画像の実現ではなく画像パターンの分析だった。その話を聞いた開発チームは医療用画像解析でも重要なのは画像を高解像度化することではなく腫瘍発見に役立つ重要パターンを解析する方法を発見することだと考えるようになった。その結果、開発方針は変更され、チームは画期的製品を開発したという。